「阿修羅のごとく」(1979)+イエロー閉店

音楽が印象的

 梅雨ごもり、なんて造語をつぶやいてはビデオを借りてきてみている。雨だと本当にどこも行く気がしない。向田邦子の「阿修羅のごとく」、4巻完結だが、面白くて一気に観てしまった。
 このドラマ、もうテレビ界の名作として賞賛され尽くしているので、内容についての感想はカット。すべて見事というほかなく、その濃密な演技、情感、演出、音楽、編集、いずれをとっても秀逸にして無駄なし。ちょっと細かい感想をメモ列記。

風吹ジュンの瞳
 このドラマの感想を書こう、そう思って真っ先に出てきたのが、風吹ジュン「瞳」だった。あの眼、その尋常ならざる輝き。この時期の風吹ジュンの目には、人を惑わすような、狂わすような、妖しく美しい「きらめき」が宿されている。女優さん、それも優れた女優さんは、生涯のうち何度かこの種の光を放つが、まさに彼女その時期。黙っているだけで、ドラマだ。こういう時期に優れた作品に出会える。それも女優としての運と力だと思う。


佐分利信のセリフ
 いや……ふざけるつもりないんですが、晩年の佐分利信って聞き取りづらくありませんか!? 私、いちいち彼が喋るたびに「えっ? 今なんつった?」とテレビに向かって訊ねてしまいそうになる。キング・オブ・ハスキー。「しわがれ」という言葉の見事な具現化。このドラマの2年後『悪霊島』という映画に出てるんですが……これは本当に凄まじいですよ。「ウォガゴゴザザシシド」みたいな音の羅列で、私はほぼカンで聞き取ったぐらい(ちょっとオーバー)。


○女優たちの髪
 天使の輪、なんて古い言葉をふと思い出した。それほどに、女優さんそれぞれの髪が美しい。特に加藤治子の自然な黒い色、向田邦子流にいうなら「髪が濡れ濡れとしている」といった風情。烏の濡れ羽色、なんて古風な表現がまさに似合う。八千草薫の自然な栗色も見事。シャギーの一切入らない、今の感覚からすると重たくみえる髪型かもしれない。けれど、その豊かな量と輝くつやに、私は懐かしさと共に、新たな美的発見を覚えた。


○記録
今日で西麻布の「イエロー」が幕を閉じた。最初に行ったのは高校3年生、最後に行ったのは多分……大学2年ぐらいだったかな。通過儀礼的に何度か行っただけなので特に感慨もないが、最初のドキドキは思い出せる。ドリンクを頼むとき緊張した。ガソリンを入れるような機械でソーダが出てきて驚いた。その頃、やたら「コロナ+ライム」が流行っていた。ライムを搾って、瓶に入れて飲む。他の人を真似て飲んだ。これじゃ子供の頃、ラムネの飲み方が分からなかったのと一緒だな、なんて思った。まだ日本で売っていなかった「L'eau d'Issey」をつけていった。ふーん、色んなことが思い出されてくる。大学に入学したての頃、名古屋から上京したY子と仲良くなった。彼女に「まず、東京でどこいってみたい?」と問えば、「イエローに行ってみたい」という返事だった。何のイベントにいったのかも覚えてないけど、そのとき彼女がY'sの服を着ていたことだけ印象に残っている。すべて今は昔。


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