「しっかり母さんとぐうたら息子の人生論」

染み入ります

「苦言を呈す」難しいことだと思う。その達人でらしたのが、女優にして名エッセイストの沢村貞子さんだった。
(彼女の著書「私の浅草」は、向田邦子「父の詫び状」と共に、昭和風俗史を著した最高レベルの随筆だと思う)

 岩波ブックレット、創刊25年に当たり15シリーズが復刊された。そのうちのひとつ、本著は植木等さんとの対談集。
 この本(というか、小冊子)の魅力は、「真実は平易にあらわせる」ということに尽きると思う。シンプルにすむことを、やたらコムズカシイ表現を使ったり、自分だけがうっとりしているような凝りに凝った比喩・修飾に満ちた文章が世の中には溢れている。そんな中で、沢村さんと植木さんが語る人間論のなんとスッキリ、わかりやすいことか。日常の見識、という言葉がおのずと浮かんでくる対談集。そして何より、楽しい。おふたりとも「お客あっての私たち」ということを髄から叩き込まれてらっしゃる方だ。人間論とて、こちらを固くさせない、説教を聞いているような気にさせない優しさとサービス精神が詰まっている。今回の復刊を逃すともう買えないだろう、興味のある方は是非。


○蛇足
植木等さんはお寺さんのご子息なんだが……このお父上の話が非常に面白い。卓抜した見識の持ち主で、植木さんは小学2年のときにこんなことを言われたそう。
「仏様(の頭をものさしで)叩いて、これは木の彫刻に金粉塗っただけで、ありがたくもなんともないんだ」
 いわゆる偶像礼拝というのは宗教じゃないという、そういうことを分からせたかったようだ、と続く。このお父上の話がたくさん出てくる。これだけでも一読の価値あり。


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