舞台「おしん」の山本陽子賛&おばちゃん観察

綾子もはや人妻

 10日、新橋演舞場にて。何よりも、おしんの奉公先である加賀屋の女将を演じた山本陽子に驚かされた。この芝居で「演劇的瞬間」というものを生み出していたのは、彼女一人だったと私は思う。
「おばちゃん」で埋め尽くされた演舞場というのは、怖いところだ。みんな基本、好き放題だもの。お喋りもすれば、うたたねもする。「カサカサ」というスーパーのビニール袋がすれる音は定期的に起こる。そんな中、彼女の存在感とセリフの力が場内に緊張感を生み出し、場を引き締めることに成功していた。そして、決め台詞では人の心を動かした。群を抜いて、よかったと思う。 
 などと偉そうに書いてますが……いやー山本陽子観を改めました。そのことをまず、書き留めておきたかったのです。しっかしまあ……つらい話ですね! 3時間ぐらいあるが、92%ぐらい貧乏で悲惨で不幸。ネバーエンディング・アンハッピー。毎日15分ならともかく、180分もほぼ不幸。だから余計に山本陽子演じる加賀屋の女将がいいんですね、華やかで。もうけ役というのもあるが、それにきちんと応えるのも力のいることだろう。
 蛇足。子供の口減らし→7歳の子供が食う物もロクに与えられずひたすら労働→泥棒の濡れ衣→雪山で遭難→恩人が目の前で射殺→父親の暴行→姉の病死……こんなストーリーを見ながら休憩タイム、ひとつ1800円のお弁当をほおばりつつ「おしんは偉いわねえ」とロビーのそこかしこで「一張羅」といった風情のおばさまがたが談話……不思議なところだ、演舞場は。


○恐るべし「おばちゃん」
この話、その昔大人気を誇った朝ドラだったので原作というか、筋みんな知ってるわけですね。私は放映時小学校低学年だったので殆ど覚えていないのだけれど、まさにおばちゃん達は涙むしりとられた世代なんでしょう。だからでしょうか横から後ろから
「ああ、おしんが盗んだって疑いかけられるのね」
「出てくのよ、それで多分雪山で……」
「あら、あそこはハショるのね」
「あそこがいいのにねえ」
「そうそう、おしん奉公先の娘と仲良くなるのよ」
「あらーやっぱりそうなった。タツコさん記憶力いいわねえ」
 私はこの公演、3秒前ぐらいに筋がすべて分かるという奇天烈な経験もいたしました。タツコさん、ありがとう。


○追記
あ、そうそう。なぜか「協力:山形県」となっていて、会場内に山形観光案内があれこれ置いてあったのが印象的。何をどう協力するんだろうか……。


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