「ヒットメーカー 阿久悠物語」

阿久悠

 ダメだ、どーーーーーーしても愛情が持てない。ああ、こんな芸のない書き方はヤなんですが……ひとこと、ガッカリ。いきなりキツい書き方しますが……「ドラマ」と呼ぶのも憚られるというか。ちょっとキャストが豪華な「再現VTR」(「いつみても波瀾万丈」とかでやる、あれね)ってな感じにしか思えなかったんだなこれが。ああ、もったいないっ!!
 時系列に沿って出来事を映像化しているだけなんだもの。「ひねり」も「タメ」も皆無。そう、例えるなら日テレが誇る長寿番組「キューピー3分間クッキング」と構成が一緒。野菜を切って、炒めて、○○を加えて、出来上がり。阿久悠、大学入って、会社入って、作詞家なって、出来上がり。まあ先生とっても簡単。アホかっ! 
 以前、浅丘ルリ子岸恵子という大女優が雁首そろえた「大女優殺人事件」のときにも思ったけど、日本テレビはクラシカルな、カッチリとした骨太のドラマづくりが本当に下手になっている。とまあ、品のないブツブツですね。面白かったと思われた方、どうもすいません。もちろん、いくつかの美点はあった。そこをちょっと書き留めておきたい。

 まず主演の田辺誠一。最初に「阿久悠役は田辺誠一」と聞いたときは、橋田壽賀子を安田成美が演じる(NHK朝ドラの「春よ、来い」)と知ったときと同様の衝撃が走ったが……これが、良かった。
 実在の人物を演じる、というのは俳優にとってひとつ危険な挑戦だと思う。似ていても「物真似じゃないんだから」と言われるし、演じる人物の一般的なイメージとかけ離れすぎてもいけない。その塩梅が、とても上手だったと思う。阿久悠さんの持つ、豪放な外見と裏腹のセンシティヴで、内省的な雰囲気が漂っていた。顔かたちではなく、阿久悠というひとの髄の部分を見つめて、役作りしたことが見て取れる。
 本当に、じっくり、ゆっくり階段を昇るひとだ。こんなにいい俳優になるとは……見抜けなかった。そうだ、振付師・土居甫さんを演じていた榊英雄という俳優が好演。俳優、というより役者の風情。
 あと、驚いたのがピンク・レディーの「ペッパー警部」。これ、音が先に出来てたみたいなんですね。私は勝手に、阿久悠さんというのは詞を先に書く人だと思っていた。いや、私の思い込みなんですが。都倉俊一とのコンビは詞が先だったり音が先だったりと、融通無碍だったのだろうか。そうそう、「ウォンテッド」がロッキード事件をヒントに詩想が生まれた、というのも興味深かった。
 最後に……本当にくだらないんですが、作中「森昌子」のデビュー当時が映し出されるんですね。あの非常にシャギーが多用されているというか、荒い繊維質を生かしたスーパーショートヘアの頃のマチャコ。彼女のアップから一転、CMに映った瞬間に画面に登場したのがなんと「佐伯チズ」! 私思わず「イリュージョン!」と叫んでしまいました。一瞬にして昌子が白髪になったのかと思った。びっくりしたぁ。それだけです。
■8月1日放映「日本テレビ開局55周年記念番組 ヒットメーカー 阿久悠物語」


○追記
作中、素人時代の森昌子が「スター誕生」で歌う「涙の連絡線」が流れるのだけれど……いやーーーーーーーーーーおら、たまげた!! すっごいなあ。うまい、上手い、巧い……どのニュアンスとも違う。技術も確かにあるんだけど、それ以上に「今まで聞いたことのない何か」が詰まっている。都はるみのようでありながら、違う個性がある。それがなんだかわからない。わからないから、新しい。さぞかしスタッフはゾクっとしただろう。


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