北島康介、末綱&前田、その涙とよろこび

ダーレオーエンという名前も興味深い

 張り詰めていたものがフッと緩んだ、そのときに流される涙。
 これが……ああ、ダメですねもう、「よかったですねえ」「ほんとによかった」「お泣きなさいお泣きなさい」そんな気持ちに思わずなってしまう。誰だ俺は。いや、北島康介選手の100m優勝直後、インタビューで声を詰まらせていた姿……あはは、もうジーンとしちゃって思わずもらい泣き。桂小金治(古いか)のように泣いてしまった。
 こらえているものが、こらえきれなくなる。これって、ドラマなんですね。こらえようとする理由、ここが、ドラマなんだと思う。
 トップを目指す、高い次元を目指す人達というのは、泣き言などいってられない。自分に厳しく、探求することのみに心を尽くす。苦しくて泣いたり、「今日はちょっと心のアカ落とし〜」などといって「全世界が泣いた」だの「絶対泣ける」などとキャッチコピーのついた映画など見ないに違いない。邁進以外に時間をつくってこなかったからこその、栄光。
 そんな彼らが、ひとつの到達点で見せる涙。その一粒に、どれだけの時間が詰まっているだろう。と、これ以上続けると比喩に「玉置宏」入りそうなので、やめます。
 それともうひとつ、バトミントン女子の末綱聡子前田美順のペアが忘れられない。オグシオこと、小椋久美子潮田玲子ペアばかりが喧伝されていたが、まさかの準決勝進出。と、よく分かってないくせに書いてますが、大本命とされていた中国、それも世界ランク1位に勝っちゃったんですね。
 1点目を日本が入れたときの、中国コーチの顔が……何度も同じ表現ですが、ドラマティックこの上なかった。思いっきり顔、引きつってるんですねこれが。おふたりとも細い目だったが、最大限に見開かれて、その隙間から驚愕の色がアリアリと(一瞬しか見なかったが、気持ち「ベンガル」と「正岡子規」みたいな顔だったような)。
 そして勝ちが決定したときのふたり、ご覧になった方も多いと思う。まるでイスラム教徒のように大地(いや、コートだけど)にひれ伏し、すべての力が抜けているようだった。私、感動しました。あの細いからだのすべてに、喜びが充満していた。喜びが爆発していた。立ち上がれないほどの、ショックというスケールほどの喜び……私は感じたことがあるだろうか(逆は……ある。ハハハ)。はい、人間に生を受けた以上、それを感じられるよう、頑張ります。


○追記
16日に金メダルを取ったレスリングの吉田沙保里、この人の涙も感動的だった。もともと涙もろい人のようだが、あの闘志溢れる強い顔から一転、ペチャンコになって涙にむせぶ表情がなんとも印象的。


○まともな付記
北島、最近中国では「蛙王」という愛称で呼ばれているそうです。なんだか日本語だと変な感じですが、蛙=平泳ぎ、そのキングという意味だそう。そしてちゃんと「ちょー気持ちいい」も「超爽」と報道されてました。なんて発音するんだろう。使ってみたい。


○昭和系付記

この「こらえているものが、こられられなくなる」という美しい瞬間で思い出すのが……昭和47年のレコード大賞授与式ですね。いや生まれてないんですが、VTRで見て感動したのです。大賞は名曲「喝采」を歌った「ちあきなおみ」。この方、「大賞はちあきなおみさん!」と発表されてもズーっとクールだったのですが、表彰状を読み上げれている間に、こらえられなくなった。「このレコードは、昭和47年に発表されたものの中で、もっとも優れたものであることを認め、ここに賞します」
 そういわれた瞬間、張り詰めていたものがフッとはじけた。涙が噴き出した。1972年のレコード大賞は、今では想像もつかないほど権威のあるものだった。彼女の涙には、何が詰まっていたのだろう。


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