さらに「篤姫」・その7

毎週の楽しみが出来て重畳

 なんだか、「篤姫・定点観測」になってきている日曜ですが、うーん……毎回褒めるのも芸がないですね。でもなー……ああ、今回も面白かった! いやはや、息を呑みました。
 習ったのいつだっけなあ……中学でしたか、「公武合体」だの「攘夷(じょうい)」だの、そんな言葉が飛び交う、ときは文久。調べなおしてみたら、1862年和宮徳川家茂と結婚しているですね。146年前。110歳ぐらいの人が生きてると思うと、そーんなに昔でもないような気が。日本人が西洋文化と合い混じってから、まだ150年ぐらいなのか。150年前の日本は皆着物でチョンマゲで、「宮さん」はオールウェイズおすべらかしで。いかにこの150年がすごいスピードで動いたか。そんなことを、篤姫イントロを聞きながらボンヤリ思っていた。
 今回は和宮入城、将軍と篤姫に対面の回。以下、キャスト雑感。


 よくないなあ、と思いつつ。なんちゅうか……男ドラマのシーンになると「ほかのこと」してる自分がいるんですね。綿棒で耳ほじったり。爪切ったり。極論ですが、いっそのこと男ドラマ、奈良岡朋子先生に全部語って頂いてハショってしまってはどうだろう。それほどに、篤姫サイドの女ドラマと、釣り合いが取れていない。女ドラマの面白さに、見合っていない。なんだか「ダメな世の中じゃー」「うおー」「老中を殺れー」とか、単純にイキリ立ってるばかりなんだもの。まあ実際にそーいう世の中だったんですが。「怒り」という感情を、ベタな表現としての「怒り」(声を荒げたり、イカつい表情をしたり)ってだけで表現されちゃ、なあ。男ドラマを「みせる」なら、「怒」を「喜・哀・楽」のいずれかでも表現できる役者、表現させる演出がほしいところ。蛇足ですが、「怒」一本でも極めれば芸。的場浩司、あれはあれで立派だと思う。


 今回、シンプルに「なんて武家って野蛮なの、キー!」「あああ偉そうに、なにが公家よ!」みたいなベタな回でした。姑である天璋院和宮が挨拶するさい、どっちが上座か……などという細事が積み重なって、そりゃあもう大奥は大騒ぎ、ってな回。
 みどころは、ひとつ。宮崎あおい演じる天璋院和宮
「江戸に降嫁したつらい気持ちは、分かる。けれどすでに徳川に嫁いだ人間。筋は通して、家を盛り立てることに専心してほしい。私が導きましょうぞ」
 セリフは勿論もっと立派な文句でしたが、内容は大体こんな感じ。この啖呵が本編のクライマックス、見せ所であった。
 結果からいって、宮崎あおいは立派な説得力をもってセリフを言い切った。それが、素晴らしい。身分の高い女の啖呵であり、諌(いさ)めであり、懐柔でもある言葉なのだ。途中、若村麻由美がトランス状態のような表情で演じている観行院(和宮のおっかさん)、そしてこの時代の婦女子と原寸大と思われる庭田嗣子役の中村メイコ御大、ふたりに「何をいわしゃる!」みたいに口を挟まれるんだが、それをピシャリと跳ね除けるという偉業まで成し遂げた。
 このシーンを「面白い!」と見つめた人は多かったんじゃないだろうか。それは取りも直さず、宮崎あおいの演技が成功したということなのだ。
純情きらり」のときは見抜けなかったが、間違いなく時代の大器だと思う。これからも大きい企画にぶつかりながら、絶滅しかけている「大女優」という芸能界の超レア種に向かって、邁進してほしい。


○きょうの滝山

 個人的に一番好きな滝山さま、今回も妖艶にして因循な風情と言動の数々がたまりません。
 あなたの周りにも一人はいませんか、「こいつだけは絶対敵にまわしたくない女」って。一筋縄ではいかなそうな女、本音を絶対のぞかせない女、百通りは裏工作を知ってそうな女……そーいう人って、同類をすぐさま見抜くのに長けているんですね。
 初お目見えの滝山と庭田嗣子、目と目があった瞬間から
「こいつ……曲者ね」
「何やろ、けったくそ悪いおなごはんやな」
 と言わんばかりに無言でメンチ切り合っておりました。素晴らしいショットだった……稲森いずみが汚いものでも見るかのような目つきで顔を背けたかと思えば、メイコは下から見上げてるのに見下ろしているような自己矛盾した表情で「フン!」と鼻で一息。どっちも演技というよりは、顔芸。至芸です。
 それにしても、今回の「公家×武家・女のバトル」に幾島を参戦させたかった……初の滝山との協力・強力タッグが見れたかもしれないのに……。
 
 ドラマ内ではこんな優しそうな表情を見せることはありません。どうでもいいですが、この役はドラマ化されるたび、芸能界の中でも極めつけの香ばしい方々が演じられてきました。知る限り、園佳也子富士真奈美→小川眞由美→中村メイコ。こんな流れ。ヒイイィィx。


○蛇足
 そうそう、ひとことだけ。いくらなんでも庭田嗣子、篤姫に対して「あんたさん」とはいわないのではないだろうか。


○記録
土日、ずっと降ったり止んだりの東京。来週もずっとこんな感じとの予報が。夏が駆け抜けていったかのよう。朝晩は肌寒く。夏は夢で、まだ梅雨かのような気持ちになった寝ぼけの午前7時。麻布十番祭りで買った「はせがわ酒店」の紙袋が、そんな錯覚を打ち消した。


☆毎週金曜更新・こちらもよろしく→「私の渡世・食・日記

○お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuoatsushi@yahoo.co.jp