最近の映画メモ・2

紫吹淳

 昨日に引き続きCM前説なんですが……いきなり宝塚の男役さんが飛び出してくるコマーシャル、知りませんか?
「あんし〜ん、なんとか〜、あんしん〜、なんとか〜♪」とノリノリで歌っちゃうんだけど……私、あれに遭遇するたび度肝を抜かれてしまうんですね、なぜか。
 調べてみたら「フラット35」とかいう住宅ローンのCMでしたが、いったい何が安心なんだ!? (どうでもいいが、聞こえづらかった「なんとか〜」の部分が商品名だった。作曲ミスだと思う)
 起用意図もコンセプトもよく見えないが……とにもかくにも、声だ。私はヅカ特有の男役声に……ビビってるんだと思う。
 ヅカ声というのは、歌舞伎女形の声もそうだけど、「これから伝統芸能が始まりますよー」「さあ、宝塚を観ましょう」と心構えしてのぞむものじゃないだろうか。なつかしの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の名物コーナー、「早朝バズーカ」に近いドッキリを感じてしまうのは……はい、私だけですね。
 今日も昨日の続き、最近の映画メモ。


■『ああ、結婚生活』(原題:Married Life)

監督はアイラ・サックス、三作目とは思えない達者なつくりだが……ごめんなさい、この映画に関して一番面白かったのが、プレスに寄せられた編集者・高崎俊夫さんの文章だ。この映画がモチーフにしているであろう40〜50年代ハリウッド・メロドラマの数々を引き合いに出しつつ、実に魅力的な解説を述べられている。クラシック・ファンなら読むうちに「おお、その映画も見てみたい!」と胸躍らせるような内容になっていると思う。お話としては中年男の「テネシー・ワルツ」。冒頭、ピアーズ・ブロスナンにフツーのオジサンが美人の彼女を紹介する……これですべての展開が見えてしまった。レイチェル・マクアダムスを飾るエレガントなヘアスタイル、ドレスを堪能。Bunkamuraにて9月13日より公開。
 レイチェル・マクアダムス


■『地球でいちばん幸せな場所
ベトナムアメリカ人、ステファン・ゴーガーの初監督作。近代化が進むベトナムの風景と現在が映し出される。自分で教科書代から、生活費までを稼ぐ子供たちの姿。身につまされる。ドラマ、というものよりも、国というものの成長を思う。青年期、中年期、壮年期、老年期……日本とベトナムの「年」の差。主演の子供、ファム・ティ・ハンの強くて真っ直ぐな目が忘れられない。すべてを見抜くような眼差し。貧しき青年、レー・テー・ルーの表情も印象的。ビデオで見る大昔の日本の男優のそれにフッと重なる。全く顔は似てないが、若き日の佐野周二の瞳を思い出した。すいませんひとつだけフザけます。ヒロインのカット・リー、けっこうな割合で「荒川静香」が激しく入る。シネマート六本木にて公開中。


■『トウキョウソナタ

 黒沢清監督作品。とにもかくにも、現在12歳の井之脇海という俳優が素晴らしい。子役などという呼称は出来ない。演技者だ。この作品の中で最も印象的であり、本作を思い出すたび真っ先に脳裏によみがえるのは、彼だ。恐ろしいことに、この人しか生み出せない情感、そして画面を奪う主役者の存在感をすでに持っている。射抜かれるような、その「目」――「達者」な役者が皆おろかしく思えてくる。大成してほしい。そうだ、アンジャッシュ児島一哉が力まない演技で好演。蛇足:最後に井之脇少年がドビュッシーの「月の光」を弾く、これは吹き替えなんだそうだけど、運指が見事に合っていた。すごいなあ! 9月27日公開です。
井之脇海


○記録
具合が悪くて医者へ。処方箋をもってマークシティそばの松岡薬局へ。ここの調剤師のおばちゃんは優しくて、本当にいつも心がほっこりするかのよう。近くの古本屋で昔の「太陽」を買う。本当に、ゼータクなつくりの本だなあ。気力を振り絞って京橋にて『ヤング@ハート』の試写。おじいちゃんの「I'd like to expend my horizon !」というセリフにガーンとショックを受ける。こーいう言葉との出会いがあるから映画は楽しい。


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