蛇男・蛇女

あなたの蛇はどんな蛇?

 毒蛇を無断で買っていた男が逮捕された。エサをやろうとして噛まれてしまい、救急車を呼んだことだことから発覚したという。
 その噛んだ蛇は、世界で2番目に毒性が強いのだそうだ。世界一を決める祭典が北京で終わったと思ったら、随分おっかない銀メダル選手が現れた。
 なんでもこの蛇男、知る人ぞ知る存在だったよう。テレビ局は既に取材をしていたらしく、当人ご出演のインタビュー映像が流されていた。
――どうして、そんなに蛇を飼うのですか。猫や、犬じゃなくて。
 彼は、間を置かずこういった。
「あくびもするし、おならもするし」
 蛇のあくび。
 蛇のおなら。
 考えてみれば……何だかユニークで楽しそうだが、一瞬、煙に巻かれてしまった。記者も動揺だったらしく、しばし絶句していた。蛇のあくびとは、そんなに可愛らしく、魅力的なものなんだろうか。しかしさらに考えてみれば、おならは知らないが、猫も犬もあくびはするはず。そこを、突っ込んでみたかった。猫なんて目じゃない、あなたは蛇のあくびを分かっちゃいない……うっとりと語るだろうか、諭すように語るのだろうか。


 女は心に、誰しも一匹の蛇を飼っている。
 とあるベテラン女優が、かつてこんなことを言っていた。失礼だが最初は凡庸な表現と思い、さほど気にも留めず忘れてしまった。今回、蛇つながりで久しぶりにこのフレーズを思い出したが、なかなかにうまい例えに思われてきた。
 この人が飼う蛇は、脱皮を繰り返す代謝の良い蛇だな、と思う女も多い。
 この人が飼う蛇は、牙を剥くばかりで、毒々しいばかりと思う女も多い。
 この人が飼う蛇は、獲物が来るのをジッと動かずに待つ性質(たち)だな、と思う女も多い。
 この人の蛇は、冬眠しっぱなしなのだな、と思う女は、とても多い。
 
 くだんの蛇男は、噛まれた指が壊死してしまったという。餌を与えているのに、牙を剥く蛇。餌を与えてくれるからこそ、牙を剥いた蛇。ちょっとうがって考えれば、そんなふうに取れなくもない。そんな女も、いなくはない。今、動かぬ指を見て彼は何を思っているだろう。
 彼はなんと七畳の部屋に、51匹もの蛇を隠し飼っていたそうな。飼育ケースが壁一面に積み上げられ、その高さは2メートルにもなったという。寝るところもなかった、という報道だった。  
 それは彼にとって、一種のハーレムだったのだろうか。


○記録
 梅雨の中休み、という言葉はあれど、なんというのだろう、こんな頃合の雨休みは。いつも夕立みたいな雨続きの中休み、秋雨手前の残暑潰しの雨休み……ええいともかく、久方ぶりの晴れ。夏の名残に冷汁をつくる。そのことは下記の食日記に書いてみました。こうしちゃいられないと洗濯をする。する。とにかく洗濯機まわすまわす。そして干す。干す。ああ、青空の下洗濯物が風になびくさまのなんと健やかなることか。しかし部屋干しだとバスタオルが悪夢のように乾かない。「妖怪こっそり夜中に洗濯物水掛け」とかいるんじゃないか。


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○お知らせ
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