『氷の華』 その2

見事なまでに生活感のない二人です

 ああ、ごめんなさい……昨日あんなにハイに書きとめていた『氷の華』ですが、いやーアッサリ意気消沈。なんつうかなー、薄かったなーっ!
 二夜連続でやらないほうがよかったですね、ムリヤリ話を延ばしている感じ満々。それになー……昨日は「なんでもありのファンタジー!」と、そのバカバカしさ加減を楽しもうと思ったけれど、やっぱ警察やら裁判がスジに絡んでくると、もーダメですね。
「筆跡鑑定ってそんなユルいもんなの!?」
「ていうか簡単に人殺しすぎだろう! もっとタメってもんがないのかー!」
「そしてあんなにイージーに殺してんのに、なんで見抜けないんだ警察ーっ!!」
 なぜの嵐。テンポよく3時間ドラマで一気に見せ切ってくれればよかったのになあ。以下キャスト雑感。

米倉涼子
ヒジョーに泣き顔のいい女優だ。そして泣き顔の引き出しが多い。悔し涙、ショックで流す涙、哀切の涙、自尊心から流す涙……様々な泣き顔のそれぞれがドラマティックで、凡庸な脚本に彩りを与えていた。ただ、裏切った相手に死を与えるほどの、怒りと冷酷さを感じさせる芝居がほしい。この人を真底怒らせたら、殺されるかもしれない。自分の邪魔なものを消すぐらいなんとも思わない、というプライドと妄執。これがこのヒロインには必要だった。演出がよければ、そこも探求できただろうに。


まったくピアニストである必要はありませんでした。


舘ひろし
腹話術のように「キマってるぜ、俺」「ベイビー」「カッコいいだろ」という声にならない声が芝居中ずっと聞こえてくる。なのでセリフがよく聞こえない。うるさいったらありゃしない。こういう芝居は自分が主役、それも座長芝居的なドラマのときみに許されるものであり、犯罪者を追及する刑事、ましてや女優さんを立てるような芝居のときにするものではない。と手厳しい意見ですが、泣かないで。


○そのほか
鈴木杏樹、まーったく本筋に関係ない役柄でビックリ。単なる「にぎやかし」だったなんて……しかしどーして製作陣はこの人に「舞台女優」なんて役をやらせたのだろう。これはある種の「虐待」 じゃないだろうか。高岡早紀……編集者の役ですが、この方グラビアの撮影をも自分でこなすスーパー編集者でした。すげえでかいカメラ自在に操ってます。そして米倉に依頼したエッセイを「受け取りにいく」というのにも衝撃。米倉さん、「あたし原稿用紙で鉛筆じゃないとダメなの」とか仰ってるんでしょうか……田辺聖子佐藤愛子クラスの大御所です。しかしいい女、魔性の女みたいな役がよーくつく人だ。私、この人の本質って『釣りバカ日誌』の浅田美代子役みたいなところにあると思うのだけれど。葉月里緒奈、頑張ってました……なんと米倉と昔レズだった、そして今でも愛憎のただなかにいるという役。まがまがしい感じを出せる貴重な人だと思う。それを受ける米倉が「この子とは離れられないのよね……」みたいな、両刀的ニュアンスをもっと出ればよかったのに。これも演出のせいだとは思うけれど。そのほか、すべて「なにもこの人じゃなくても……」という結果。そうそう、看護師長役の前田美波里、いつ聞いてもセリフの一語一語が見事なまでにクッキリ・ハッキリ。日本一口腔筋肉の発達した女優だと思う。


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