若尾文子の帯締め

11月6日より

 森村薫の「華々しき一族」を若尾文子で……という記者会見が放映されていた。
 先日の「徹子の部屋」に出られたときは、驚いた。終始彼女は、暗いものに支配されているようだった。トークのテーマも、ほぼ亡くなられたご主人・黒川紀章氏のことだった(多分、番組として最初から意図したことではなかったと思う)。
 目に涙を浮かべ、洟のすすりが止まらない――そんな姿も、晒された。気丈な人と思っていた彼女が、まるで手折られて暫く経った野の花のようだった。こころは暗澹とした世界に在り、そこから必死で声を絞り出しているように、思えた。


 しかし、この日はなんとも晴れやかで、大女優の風格が復活していた。
 白い絽の着物に黒の帯、そこにしていた帯締めが、良かった。鮮やかな紫色で、テレビの遠目にも水際立つ。白に黒、しかも裾模様も墨色の葉という(粋なのだけれど)地味な「まとめ」が、この紫で一挙に華やぐ。
 帯締めなんて、全体のバランスからいったら面積的には3%ぐらいの色味だろうか。それが、こんなにもあでやかな効果をもたらすのだから、きものとは面白い。
 今日のこの日、紫を選ばれたということが、実にたのもしい。演技することが、亡き人への愛惜に沈む彼女に、光明をもたらした証しのような気がする。勝手な推測だけれど。
 紫の帯締めが似合う人、というのも少ない。彼女が選んだのは、朱のまじった紫ではなく、品の良い貝紫のような色だった。まあ、うちで十ウン年も働いているポンコツ・テレビで見た限りだから、定かではないけれど。


○付記
 と、こんな熱をこめて書きましたが……WEBを見たら「衣装」でした……。はぁ……いや、若尾さんの見立てと信じて、載せさせてくださいな。

 マルベル堂のブロマイドより。個人的に好きな一枚。ほんっとうに可愛いなあ!


☆毎週金曜更新・こちらもよろしく→「私の渡世・食・日記

○お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuoatsushi@yahoo.co.jp