『だんだん』への私なりの賛歌 ―山口翔悟の流し目―

こんなあどけない顔してやります

「鏡よ鏡……日本で今、いちばん『陶酔』している人はだあれ……」
「はい、それはNHK朝ドラ『だんだん』にご出演中の、山口翔悟さんです!」


 これでピンと来る人、けっこういるんじゃないだろうか。
いやーーーーーー、すっごいんだから山口翔悟。毎日毎朝、彼は「くーっ、たまらん!」と私を悶絶させる。あいつは常に私の予想以上のことをやってくれる。すごい、すごいよ山口翔悟


 ■ ■ ■ ■ ■ ■


 彼は、漫画だ。
 それも、美内すずえとか、あのへんの古典派少女漫画の世界に生きる「男の子」を、ここまで純粋に映像演技に昇華させた例を、私は他に知らない。


 彼のすごさをひとことで表しましょう。山口翔悟=(「ヅカの男役」+「座長っぽさ」)×弱冠25歳、というところにあるんだなこれが。はい、訳分かりませんね。
 簡単に状況を説明すると、マナカナ演じる主人公の片方が、介護士を目指しながら大学で勉強してて、その夢を捨てさせてまでも「歌手になれ!」と迫る芸能マネージャー、という役なんですわ、彼。


 世の中には、「断言する男」というのが一定数いつでも存在する。
古くは千石イエスとか、最近だと「子宮筋腫を揉んで小さくします!」とふれ回った整体師とか、スローセックス提唱者のアダム徳永さんにもそんなニオイがする。
 彼らのセオリーは皆一緒、
「自分の意見=真理」
 自分の意見は絶対に曲げない。押し付ける。押し通す。「君のためを思っているんだ!」これが決まり文句。そーいう男なんです、山口翔悟演じる芸能マネージャー、石橋。


 しかし大体こーいう男って、最低でも三十代も後半というか、ある程度の「いぶし感」というか「黒光り感」が伴うもの(この顕著な例が村西とおる羽賀研二だと思う。この二人の持つウサン臭さって、ある種の女にとっては効し難き魅力=説得力なんだと思う)。酸いも甘いもかみ分けてこその強引な「折伏力」ってなもんですが……この山口演じる石橋マネージャー、どうみても二十歳そこそこなんだが……その強引な握力たるや!
 誰がなんといおうとアイ・アム・ライト。


君は絶対歌手になるべきだ
 いやだから介護士になるために京都まで来て大学入ったばかりなんですけど……
それがどうした、解散した君のバンド仲間も松江から呼び寄せたよ
 えええいつの間に! 二人分の交通費とか自腹!?
ライブハウスへおいで。待ってる(ガチャ)
 出たーッ、強引な男の常道、ガチャ切り! 
絶対君をスターにする。それが俺の夢なんだ!
 多分、彼ならハーバライフでもアムウェイでもたちまちトップ・セールスを記録できるだろう。センター街のキャッチでも六本木のスカウトもカリスマ。実情よく知らないで書いてるけど。
 なんでそんなに自信があるの。どこからその自信は湧いてくるの!?
あなたに私の人生を決める権利はないわッ!
 マナカナの茉奈があらがいます。拒絶され一人残された石橋マネージャー、その目が素晴らしい! クッと片眉を吊り上げ、体斜め45度でハーフシャドウの照明、そして杉良太郎も真っ青の素晴らしい流し目で、「ふぅ」と溜息。


 私には、聞こえた。
まったく、世話の焼ける仔猫チャンだぜ……
 そんなセリフが聞こえてきた。「シガー」とかくゆらせてるようにも見えた。うん、そうそう。このドラマって、昔なつかしの「大映ドラマ」から隠微・悪意・セックスを抜いたような話なんですね。つまり正統少女漫画なわけです。その辺の世界の「男の子」って、実写化すると「男」じゃなくなるんだなあ。どーしても「男役」とか「時代劇・大衆演劇」的な虚構性が強くなってしまう。私、さっきの流し目どっかで見たことあるような……と思ったら、「新橋演舞場特別公演・田村正和主演・眠狂四郎」のポスターに似ていた。いやホントだって。


 そんなこんなを照れることもなく楽々こなす25歳、山口翔悟。ちょっと怖い。しかし一番困るのは、彼がそこまで歌手に、スターにせんと血道を上げているマナカナの歌に、ちいとも私は未来性を感じ取れないという点なのだけれど。


○付記
そうそう、マナカナのやってるバンドの名前が、これまたすごい。舞台となる松江は宍道湖にちなんで、その名も「シジミジル」。「シジミジル」……いや、そうですね、そうですね、「コブクロ」だって「ゆず」だって「シジミジル」だってみんなみんな生きているんだ友達……にはなれないと思う。


☆毎週金曜更新・こちらもよろしく→「私の渡世・食・日記

○お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuoatsushi@yahoo.co.jp