『篤姫』定点観測 その10

見る度に「ぷっつん5」を思い出す私

 もはやすーっかり熱の冷めてしまった『篤姫』です。あの情熱はいずこへ……そう、最近は「口さがないことをワザワザ書かんでも」と思ってやり過ごしてきました。しかし、やーっぱり(よせばいいのに)書かずにはおれない。
 ああ……小手先だ! あの充実していた先々月ぐらいが嘘のよう。とても安息日どころじゃない。はい、こっから先は鶴太郎のファンは読まないほうがいい。
○鶴太郎にヘキエキ
 そう、一番「いやらしい」芝居をしていたのが岩倉具視を演じる片岡鶴太郎だ。ちょっとしたアクションのたびに
あたしゃウマイんでございますょ
 という声にならない声が私には聞こえてしまう。人間を演じているというより、キャラをつくっているという感じ。その「キャラ」がまた、手をすり足をすり「カサカサ」と音を立てて殿上を歩きそうな岩倉卿。そして梅干の「天神様」みたいな顔をさらにしかめて「クセモノ」ぶっているようにしかみえない。ああ……その「肚」(はら)のなさ、薄さ! 

○泰造にもヘキエキ
 肚がない、というのは「役の真意がない」ということだ。岩倉具視がこの時代、このとき何をしたいのか、どういった情熱に駆られているのか全く見えてこない。こーいう叙事詩ドラマは出番が少なくとも、全員が主役のつもりで役づくりしないと途端に安っぽく、品のないものになってしまう。
 そのゲンナリ感を上乗せさせるのが大久保利通を演じるネプチューン原田泰造。しかしこちらは悪気がないぶん罪は軽い。一生懸命やっているのは分かるが、大久保という人のもつ大志が見えてこない。そして西郷隆盛を演じる小澤征悦、私はまったく詳しくないが薩摩の言葉、そのイントネーションが一本調子に聞こえて仕方ない。あれでよろしいのだろうか。


○やはりいずみが一番
 しかし後半、女たちが今回なかなか魅せてくれた。
 ごひいきの稲森いずみ中嶋朋子、W御年寄が篤姫の進退を案じあうシーンが見応えあり。稲森=滝山の冷たい風情と、ひたすらお主(しゅう)を思う情熱的な中嶋=重野。その対比の面白さを、役者が見事に表現。滝山の「上から叱りつけ命令口調」は最早絶品、今年最大のドラマ収穫のひとつ。これに高橋由美子演じる年寄、唐橋が加わって篤姫への直訴。
「薩摩といくさになる前にお帰りあそばされませ」
 と、心から願うシーン。三者三様に「肚」があり、篤姫の無事を祈っている心持が伝わってくる。高橋由美子の演技を「やり過ぎ」と眉をしかめる向きもあろうが、さほど気にならなかった。ただ篤姫の残城の強い意志を聞いて感涙に咽ぶくだりは、三人のうち誰かひとりぐらい懐紙を使っても良さそうなものだが。
 と、書き始めたら止まらなくなってしまった。やっぱり好きなんですね。


○蛇足というか、小姑的メクジラ
ふたつほど、セリフに違和感。病により足が不自由になった瑛太小松帯刀篤姫生母御前にて「すいません」といって足を崩すんだが……「すいません」ねぇ……。「かたじけのうございます」「では失礼させて頂き」とかが本当じゃないだろうか。あと稲森御年寄、「それこそ本懐というもの」の「本懐」のアクセントを間違えて驚く。「日本海−日=本懐」のアクセントになっていた。こういうのをおろそかにする人は絶対に名優にならない。あれだけいい芝居をしているのだもの、気をつけてほしい。


○くだらない本当の蛇足
高橋由美子岩井友見が親子に見えるのは私だけだろうか。


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