『篤姫』定点観測・ラスト

はじまりはいつも囲碁

 実質的な最終回はひとつまえ、『明治前夜の再会』だったと思う。
 この回の完成度の高さは特筆もの、タイトルにあるとおり、篤姫小松帯刀の再会のシーンが素晴らしかった。あれほど清らかな愛の情景が「今の」テレビで観られるとは!
「もしも島津家の養女にならなかったら、私と一緒になってくださいましたか」
 セリフは正確じゃないが、意を決して小松がこんなことを篤姫に問うわけです。
「その答えは……家定公に相談することに致しましょう」
 答えをかわしながらも、篤姫の笑顔には大きな肯定の情愛が溢れている。しかし、大御台所としての矜持と誇りが必ず胸にある。一度、深い大きな愛に満たされたものだけが持つ自信と尊厳がそこにある。拒絶ではない、ソフィスティケーションに満ちた返答に小松は
「ずるいな、それは」
 と笑う。ここは「現代的に過ぎはしないか!?」とちょーっと引っ掛かったのだけれど、そんなラフなやりとりに急に陥るところが、かえって昔日をしのぶ二人の心持を表すような気もした。愛を叫ぶだけではない、愛すればこそ触れ合わない愛もあるのだ。爽やかで気品ある心のやりとりに、私は打たれた。


 いやー……大河ドラマを毎週心待ちにしたのなんて何年ぶりだろう! とうとう終わっちゃいました『篤姫』ですが、最終回は(しょーがないんでしょうが)すべてこれ後日譚+総集編ってな感じでした。ドラマとしては先にも書いたとおり、前回で終わるべき話だったと思う。
 篤姫が大奥を去るシーン、よかったですねえ……。「輿」ってんですかね、あの乗り物。ウルシ100パーセントみたいな絢爛豪華な蒔絵のお化けのような乗り物。乗り込んだ篤姫、扉がスッと閉まる瞬間にスローモーションになる演出、ブラボー! 思わず総毛立ちました、私。
 個人的に篤姫・最優秀助演女優賞を差し上げたい稲森いずみ篤姫に「これからどうするのじゃ」と訊かれてひとこと。

「わたくしは、大奥と共に消えとうございます」
 この名言……くぅーーーーーーーーーーッ、たまらん! こんないいセリフを脚本家に書かせた、そして脚本家が「この女優にいわせたい」と思わせた、それだけでたいしたもの。しかし本当に時代劇、というかこの滝山という役がハマった人だ。権謀術数うずまく大奥にふさわしい妖狐のような存在感と玲瓏な美貌を示しつつ、しかしそれだけではないどこか人間的な御年寄を創り上げた。これからも時代劇でいい役がついてほしい人だ。
 ついでに考えてみますが、最優秀助演男優は……家茂公を演じた松田翔太でしょうか。あれだけ凛とした「とのさま」も演じられるなんて大したもの。見方が変わりました。それに、髷があんなに似合う若手俳優はなかなかいない。
 最後に蛇足。最終回、小松帯刀の「いまわ」が不満。もーーーーーーーーー少しゲッソリできなかったもんか!? 病の果てに力尽きる、という風情もクソもあったもんじゃない。私が俳優なら3日ぐらい食べないけどなあ。あんないい役でいい死に際なのに。今までの演技がとってもよかっただけに残念でならない。


ようやく更新! こちらもよろしく→「私の渡世・食・日記

○お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuoatsushi@yahoo.co.jp