柳家小三治の映画と桂三枝の新作落語

柳家小三治

 2月21日から公開されるドキュメント、『小三治』が面白い。先日の試写会では、小さな試写室に皆の笑い声が寄席のように溢れていた。こういう一体感を試写室で味わったのは久々だなあ。いいねぇ、嬉しくなっちゃうねえ。
 その芸と人に惚れこんだ康宇政監督が追った、柳家小三治、その三年間の足跡。
 観終わってからというもの……すっかりファンになってしまいました。その普段の口調、人柄がいいんだなあ。実に小ざっぱりとしつつ、素敵にロマンティストだ。
 

 必見は兄弟弟子である入船亭扇橋とのやりとり、これがたまらない。もうフタコト・ミコトで「熊さん・八っつぁん」になっちゃうんだもの。まんま上質な落語の「イキ」で、おっかしったらない。ふたりとも椅子に座ってるのに縁側で話しているかのよう。
 蛇足ながら最後の「鰍沢」、さほど会心の出来とはいえないのでは? まあしかし楽しいドキュメントだった。今度じっくりライブの小三治を聞いてみたい。
(ドキュメント『小三治』のHPはこちら

桂三枝
 試写の次の日は有楽町朝日ホールへ(10日)。「桂三枝の笑ウィンドウツアー2009」 創作落語の会。

 はじめにお弟子さん二人の落語、そして三枝。中入りの後に大喜利、そして三枝という構成。
 弟子の桂三歩、初めて聴きましたが……最高ですね。「からめ手」など一切なく、直球でガンガン笑わせてくる。こちらも、子供のようにゲラゲラ笑ってしまった。
 もうね、「やれることすべてやりまっせ!」という姿勢が潔いんだ。顔で笑わせて、手振り身振りで笑わせて、そしてテンポも勢いも全精力で。こういうやり方、実力がないと空回りしてしまうもの。生簀(いけす)料理店の魚ニ匹を主人公にした創作落語、食われまいとする二匹があれこれ知恵をめぐらすという設定もサイコー!
 桂三歩

 そしていよいよ、三枝。
 まずその洒落者ぶりが目を引く。牡丹と鴇色の間のような薄紫の羽織に薄い灰色の着物。こう書くと随分派手というか、いかにも関西芸人らしい組み合わせ、と思われるかもしれない。しかし、下手袖から現れた三枝のすっきりと品のあること。こんな色合いが「のる」人はそうそういない。そしてお約束の
「いらっしゃーい!」
 不思議と嬉しいもんですね。なぜか「やっぱりこれがなくっちゃ」と思ってしまう。
 携帯メールをモチーフにした一家の噺がよかった。新作をつくることは未来に、今の世相や文化を残し伝えること…という彼の意図はハッキリと描かれた好作だった。


15日更新・こちらもよろしく→「私の渡世・食・日記

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