最近の映画メモ

見事なまでのひょっとこ顔

 菅直人さん、麻生太郎さんにご質問されてましたねえ。
「任命した責任を、どう取るつもりなんですかぁ!」
 そのリプライが
「私の前で飲んだの見たことないですよ、中川さん」
 これじゃあ、なあ。
 この方、文章だと結構面白いことお書きになるんですけどね。以前「文藝春秋」での「20世紀の美男」というアンケートでは白洲次郎を挙げ、麻生一流のキザがふるった文章で中々楽しませて頂いたのだけれど。多分バー・トークなんかとっても上手なんだろうに。
 あそこで菅さんに
「そうだなあ、責任とって中川と一緒に四国八十八所でもまわりますか」
 とかなんとか返すぐらいやってちょうだいよ。いっそのこと「お遍路」のカッコで登場するとか。
「わたくしの反省のほどを見ていただきたくて!」チリーン。
 まあそれは冗談としても、誰だってなあ、ホコリの出る・出た体だもの。麻生さんをかばっているわけじゃないんですが、あの手の「やめろーやめろー」みたいな芸のない追求って、なーんかおちょくりたくなるんですね。全員で「喉元過ぎれば」という言葉の具現化をしているように思えてならない。
 さて、今日は最近の映画の印象メモ。


○『パラレル』
出演 要潤 島谷ひとみ 市毛良枝 泉谷しげる 秋吉久美子
監督 武藤数顕(北条秀司のお弟子さんなんだそうだ・これが映画初監督作品)


 ヒロインが島谷ひとみというキャスティングから生まれる異様なリアリティ。そしてさらに島谷の母親役に市毛良枝というのがさらに強力な説得力を生み出す。パラリンピック出場、あっけなくその夢がかなってしまう。その間に様々な苦労もあったろうに。前半の恋愛模様をすべてカットして、車椅子バスケをはじめてからの葛藤を描いてほしかった。そして看護婦・Bがなぜあんなに意地悪なのか分からない。秋吉久美子、小川眞由美への道を歩んでいるような……。


○『昴』
出演 黒木メイサ 桃井かおり 前田健
監督 リー・チーガイ(『不夜城』のひと)

 本能でダンスを吸収していくかのような昴、向こう見ずで感情的で、なんの計算もできない。できるのはダンスだけ……という野生的なキャラクターが成立していない。ゆえに様々なシーンで違和感。コンクール本選前日、恩人の死にショックを受けて、昴は雨の夜を傘も持たずに放浪する。こーいうところがねえ、盛り上がらないんですよ。「ああ、昴なら明日のことなんか考えられないよねえ」という納得感がほしいところ。なんか、頭良さそうなんだわ昴。
 しかしまあ、私はこの手の映画って「ヒロインがきれいだ、可愛いな」と思えたらそれで合格だと思っている。本当に黒木メイサ、美しい! 監督が一番そう思っているだろう。愛情のある撮り方だった。桃井かおりは最近、桃井かおりを演じているように見えてならない。前田健のダンスのうまいこと。


蛇足
しかし本当に黒木メイサ要潤に似ている……。ご親族じゃないだろうか。このネタ以前にも書きましたんで、よろしかったら参照してください→こちら


○『ハリウッド監督学入門』
中田秀夫監督によるドキュメント。ハリウッドで映画を撮る、その上で感じたあれこれを生活雑記と共にまとめていく。監督が自宅マッサージを受けたり、海辺でボーっとしたりというシーンが結構多い。「このかた結構ご自分だいすきなんだなあ」という印象。秋元康が「これは中田さんによる『アメリカの夜』」というコメントを寄せてますが、そんないいもんじゃありません。


○『四川のうた
監督 ジャ・ジャンクー(『長江哀歌』)


私はこの人の目線が好きになれない。どうもいつも「ほんのすこし上から」なにおいを感じてしまう。「私が今これを撮らねばならない」という気持ちがウッソウと全編に漂い、辟易。


○『ベルサイユの子』
出演 ギョーム・ドパルデュー マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ ジュディット・シュムラ、
監督 ピエール・ショレール、長編第一作。


ベルサイユの森で暮らすホームレスの男(ギョーム)。そこにホームレスの女が迷い込み、幼児を捨てて逃げる。男と幼児、いろいろあって信頼関係もでき擬似親子に。この子に普通の暮らしをさせたいと願った男は、実家に預けて消える。ダブルで捨てられる子供が可哀想で悲惨で。私はこういう「考えさせられる」というコメントがつきがちな映画が嫌いだ。芸がないと思う。


○『ホノカアボーイ出演 岡田将生 倍賞千恵子 松坂慶子 喜味こいし 正司照枝 長谷川潤
監督 真田敦

絶賛したい。こんなにテンポよく、センスのいい映画をつくるひとがいたのか! なんと心地よいリズムが生まれていることか。とかく南の島を舞台にした映画は、島自体が持つ豊かさにのまれがちなもの。「いいなあ、南の島、いいなあ」みたいな監督の自己満足に終始し、ただ写し撮るだけで終わりがちな映画が多いが、この監督はきちんと島を料理している。キャストもみな好演、とくに喜味こいしがいい。この映画については別の日にまた詳しく話したい。


○『アンティーク 西洋骨董菓子店』
出演 チュ・ジフン キム・ジェウク ユ・アイン チェ・ジホ アンディー・ジレ
監督 ミン・ギュドン


 めくるめくボーイズ・ラブの世界。あはは、人生で初めて「めくるめく」って使いました。もうサービスのようにドンドコ男の子のサービスショットが。「オール・タイプそろえました!」的に正統派美形、少年、ワイルド、白人、てんこ盛り。こんなホストクラブあったら儲かりまっせ。ファンはたまらないだろうなあ。単なるドタバタ劇かと思いきや、後半ミステリーとしても中々面白くなっていく。真面目にテレずにしーっかりとバカバカしいことをやる、という姿勢がいい。


蛇足:アンディー・ジレ、私は見るに忍びなかった。エリック・ロメールの最新作にして引退作『アストレとセラドン』の主演者だが、モデル時代の輝きはどこへ。どんどん劣化していく。白人男子の美貌、落ちるときは直滑降のように早い。すごく痛みやすい果実のようだ。


○『いとしい人』
主演・監督 ヘレン・ハント 
共演 ベッド・ミドラー コリン・ファース マシュー・ブロデリック

 ハリウッドというのは、やり過ぎるか、なにもしなさ過ぎるか。ヘレン・ハントを見ていて、つくづくそう思う。ここまでシワシワを隠さない、厭わないというのもどうか。ある意味、超ナチュラル。こーいう風になるか、デミ・ムーアになるか。ほどほど、じゃハリウッドではやっていけないのですね……。
 スマイルのたびにギャザーのようなリンクルが顔に浮かぶヘレン、作中コリンもマシューも思わず彼女に欲情して、表通りだろうと子供がそばで寝てようとファックしてしまう……というのがスンナリ来ない。しかしそう感じるたび「だって私が監督だもーん・いいんだもーん」といわれているような気分に。週刊文春の映画評風にいうと「変わらぬB・ミドラーの軽妙な演技に☆ひとつ」。


21日更新「これは掘り出しもの」・こちらもよろしく→「私の渡世・食・日記

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