「モーツァルト」のようなエリス・ラーキンス
このアルバム、いーんですよ。エリス・ラーキンスというジャズ・ピアニスト。
最近こればーっかり聴いている。ピアノの音が個性的で、美しくて。彼にしか出せない音なんだなあ、一発で「エリス!」と分かる個性。優しく、耳に快く、不思議なセンチメンタリズムのある音楽。なんとナイーヴな世界だろうか。
もともとリー・ワイリー(あの油井正一御大をして『ジャズ・ヴォーカルにおける新橋の名妓的存在』といわしめた人だ。どんなんよ。でも聴くと納得なんだなこれが)のアルバム、「デュオローグ」で彼のことを知った。
以来ファンだったのだけれど、なっかなかなんですね、彼のソロ・アルバム。それが先日、渋谷のHMVにて発見。ああ灯台下暗し(うちから15分ぐらいなんです……どこ探してたんだ今まで)。とにもかくも、嬉しいなあ。
うーーん……なんていうんだろう。すぐれたピアニストが、モーツァルトの作品で奏でるような音なんですね、彼の音。コロコロ・ポロポロ。よく「珠が転がるような」なんて表現されますが、まさにそんな感じ。打鍵のアタックが軽く柔らかく、それでいて芯の通った音を紡ぎだす。
今回、後藤誠さんという方の書かれたライナー・ノーツを拝見したら、彼はピーボディ音楽院からジュリアード音楽院に学んだ経歴の持ち主なんだそう。あ、あはは……めちゃくちゃプロの超英才教育を受けた人だったとは。彼は1923年生まれというから、けっこういいところの子女だったのかもしれない。
(ジュリアードはいわずもがなでしょうが、ピーボディをちょっと説明。今でいうと、ケヴィン・ケナーなどの人気クラシック・ピアニストを輩出した名門の音楽院。ジャズの専門教育も高名。米ウィキの記載では、エリスはアフリカ系アメリカ人として初の通学生だったよう)
そう、さっき「ソロのアルバムがない」と書きましたが、彼は伴奏者として有名なんですね。
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この辺が超有名どころ。エラ・フィッツジェラルドの初期の名盤と、クリス・コナーの『バードランドの子守唄』に参加しています。すごく手に入りやすいので、興味のある方は是非。
エラがカーネギーホールでやった『1973 ニューポート・ジャズフェスティバル」も素晴らしい。エリスとエラのデュオで三曲入ってますが、ラストの『I've got a crush on you』が極めつけ。まぼろしのように美しい。
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