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『ダウト』
 メリル・ストリープフィリップ・シーモア・ホフマンの演技対決が話題の一作。
 不思議に「修道女と神父」という二人の設定が活きる。


「私は感情パターンの表現方法を1000通り知っているの!」「俺は狂気と正常を一瞬にして演じ分けることができるんだ!」

 終始こんな感じの応酬なんですが……どういうわけか、クサくなり過ぎないんですね。これが日常的な設定の芝居だったらムネ焼け必至ってな芝居合戦なんですが、あら不思議、ベトつかず・モタつかない。
 法衣とか聖衣には演技上における「リード・クッキングシート」「太田胃酸」のような効能があることを発見。

 うーん……しかし試写で観終わってから2週間ぐらい経つでしょうか、今この映画のことを思い出していたら
「私たち……一回たりとて同じ表情、してないでしょ? すごいっしょ?」
 ウフッ、と、メリルとフィリップに微笑まれたような気がしましたねなぜか。
 一番のもうけ役にして巧みな演技をみせたのは若い修道女を演じたエイミー・アダムス「受け」の演技が一番難しいのだ。


○蛇足
 もしも。
 このメリル&フィリップで『レボリューショナリー・ロード』やったら、すんごかっただろうなあ……。演技というものにおける「シュールストレミング」に出会えるかもしれない。


 参考資料:シュールストレミング。食べたことないけど。


○『ジェネラル・ルージュの凱旋
 思いっきり人のふんどしですが……今出ている「週刊現代」の江戸木純さんの評、これが素晴らしいんだなあ。人褒めてる場合じゃねえだろ、ってのは分かるんですけれども……冗談抜きに、読んでみてほしい。
 うーん……並みいる映画評担当者の中でも、ライター的素養と評論家としてのバランスがピカイチじゃないだろうか。
(簡単にいうと、客観と主観の混ぜ具合、そして読みやすさ、読ませる力のバランスというか。自分なりの感想評が書けても、「読み物」として面白くない人、いっぱいいるもの。はい、自分は思いっきり棚上げです)


 ちょっと自分なりに蛇足。


 私には見えた。
 高嶋正伸……その芝居中、ずーーーーーっとうしろに「うまいだろうダンサー」が踊り狂っている。その見事な低音ヴォイス、その見事な腹式呼吸のセリフ、眉ひとつクッと動かすだけで不快感を表すその見事な表情演技! 
「うまいだろう!うまいだろう!うまいだろう!うまいだろう!うまいだろう!うまいだろう!」
 あーらえっちゃっちゃ〜! なんだか途中から楽しくなってきちゃったほど。このかた、時代劇が合うだろうなあ。
堺雅人演じる医師を、不正のとがで吊るし上げる役なんですね、高嶋弟。倫理委員会の全体会議で追及してるシーンなんて、私「お白州」に見えましたからね。「そのほう」とかいいそう。似合いそう。
 あ、そうだ。尾美としのりが出ていた。うーん、懐かしい……しかしいい芝居されてました。事務局長というこれまた適役。このひと、日本人像の確実な一側面を体現できる人だ。
 あと、高嶋医師に仕える「三太夫」的存在の医師、これが……よかった。単なるお追従タイプ、とみせて歌舞伎でいうところの「実悪」に。子供が虫を殺すかのように悪事を働く軽い芝居が、返って怖かった。


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