夏川結衣の「存在感」〜ドラマ『春さらば』
25日のドラマ『春さらば』(テレビ東京系・開局45周年記念番組)、ご覧になりましたか?
夏川結衣が「親切な介護士 実ハ 詐欺師」という設定からして、いいっ! そしてさらに騙される面々が「市原悦子・原田芳雄・山本学」ってのが、これまたいいっ!! 山本さんはともかく、先の二人なんて騙されるより騙しそうなイメージなのに!(ごめんなさい)
うーん、なんというたまらんキャスティングであろうか!
はい、結論からいいます。概ね楽しめたんだけれども、もーーーちょい腹黒い脚本家に書かせたかった。自分で書きたかったぐらい(デビューもしてないのに)。
この話ですね、
1:主役→すごく優秀で真面目な介護士(夏川)
2:不幸な金持ち老人たち
悦子→鬼嫁にいびられる毎日。ややボケ気味。
芳雄→半身不随。広い家にポツーンと一人暮らし。
学→言語障害。
3:みんなお金はあるもんだからワガママ(学以外)。しかしなんのその笑顔でつきあう夏川。
4:当然みんな甘えまくりに。
「あなたがいないとダメェ」
「お前なら介護されてやってもいいぞ」
見事な調教師振りをみせる夏川結衣。
「私は幸せを売っているの!」
勝手な理論であの手この手で金を引き出させる夏川……。
このへんの「あの手この手」が……甘かった。結構な綱渡りというか、さして知能犯でもなく(調べたら一発でバレるような物証ばかり残しちゃうんだもんなあ)。さりとて情に訴えて「この人は悪くないの!」「いいのお金なんてみんなあげる!」的な弁舌のうまさを見せるでもなく。そこが物足りない。山本陽子主演『黒革の手帖』ぐらいの周到性とエゴイズムがほしいところ。せっかくそのぐらいのキャスト揃えてるんだからさー、などと思いつつも、まあ……何よりも達者なバイプレイヤー(この言葉、最近あまり使われませんね。性格俳優という言葉もしかり)を見るだに楽しくて。そこで随分甘い点をつけてしまっている。
まず、悦子。
この方、以前も書いたけれど(それはこれです)脇役だと普段にまして「存分にやるわよぉ!」的演技が痛快で、面白くて。アクの強いことをガンガンやるんだが、「場面さらい」になっても「舞台あらし」にはならないところが加減の妙にして塩梅の良さ。
原田芳雄、カッコいいなあ! 調べてみたら69歳。まだまだ「漢」(おとこ)って感じで、フテブテしくて。車椅子の役なんですけどね、折に入れられて二週間経った獣、という感じ。とかく「男、老境にいりて枯れる」的な俳優がもてはやされがちなニッポンですが、いつまでも肉食ってそうな面構えのオジサンに番張っててほしいと思う。いっぱいはいらないけど。
こーいうクセのあるベテランを受ける芝居、夏川結衣は本当にうまい。不思議な女優さんだ。芸能界では十年にひとりぐらいの割合で「最初から大物感が漂う人」というのが出てくる。それが見る者にイヤミを与えず、納得させてしまう人。彼女はそーいうタイプ。『アカシアの道』という近藤ようこ原作の映画でも、渡辺美佐子という大ベテランを向こうにまわしてウケの芝居を見事にこなしていた。
彼女は芝居、というより存在感の人だ。そういう意味で「映画女優」という言葉が似合う数少ない一人だと思う。だからこそ一点大きなお世話を言わせていただきたい。近年フィジカルな意味で彼女とみに「現在の松坂慶子」化が進んでいる。まだ、早い。ミュージシャンと結婚して女の子二人産んでからでいい。同じ夏川でも「りみ」化してはいけない。いまどき、女優という言葉が似合うレアな人なんだもの。
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