新型インフルエンザに思う

分布図

 とあるニュースでの、小学生の言葉が今回の「騒動」で最も印象的。


―――インフルエンザのこと知ってるかな。病気にならないようにするには、どうしたらいいと思う?
「手洗いと、うがいをしっかりするしかない」
「閉じこもってないで、表で遊んで、体力をつける。病気にならないように、元気な体に」
 メモしなかったので言葉は正確じゃないけれど、ほぼこんな内容。
うーーーん……なんというか、「王様の耳はロバの耳」じゃないけれど、具眼の士は幼きにあり、というか何というか。
 WHOが発表した「史上初のフェーズ5」ということに、日本のマスコミは大わらわ。


(※フェーズ5:WHOが発する警戒レベル。人から人への感染が、一つのWHO管轄地域内の2カ国以上で発生している状態)


○「魔女狩り」の危険性


 この報道沸騰、正しいリアクション、なのかもしれない。
 世界でこういう状況です、疑わしく思ったら、病院には行かず保健所に相談を。渡航はなるべく控えて……必要な情報が入ってきている、ような気もする。大正時代の悪夢「スペインかぜ」の悲劇を決して繰り返してはならないという気持ちもあるんだろうし。


 でもなあ……今日(3日)までの報道をみていると……「魔女狩り」的な側面が感じられて、ゲンナリ
「名古屋の会社員だーーー!」
「横浜の高校生だーーーーーーっ!」
横田基地の乳児だーーーーーーーーーッ!」
 今の段階ではみんな違ったわけですけれど、もしそうだとしたら、どうなるのか。
マスコミの性(さが)だけれども、特報性のあるものには何であれ我先と食らいついてしまう。猪突猛進。「ひとつでも多くの情報を、画像を、動画を!」という本能によって、血沸き肉踊っている状態なのだ。その「熱」が、視聴者にも自然と伝導してくる。それは、不要なアジテーションも同時に生み出していると思う。



○「エイズ報道」の教訓を活かせるか

 日本で感染者が発見されたら。
 正しく治療そして隔離がなされるべき、というのはもちろんだけど……「新型ウィルス感染者確認」の一報が出てから起こるであろう、ネット上での「あばきあい」を思うと……暗澹たる気持ちになってしまう。
「感染者は誰だ!?」
 80年代エイズ禍の時代の、患者に対する不当な偏見と差別を引き合いに出すまでもないだろう。そこに、ネットが加わる。
 例えばの話。罹患者が出た地域を特定できたとして、どこまで「感染封じ込め」対策はシュミレートされているのだろう。そしてそれが、超法規的措置として即断実行されるネットワークは出来ているのだろうか。「とりあえず疑わしきを片っ端に!」という雰囲気がどーにも感じられて、危なっかしくてしょうがない。感染者の肉体的な保護と人権的な保護、このふたつを、関係者が出来る限り想定されることを、願ってやまない。
 横浜の高校生はなぁ……本当に良かった。あのニュースを聞いていると、即誰だか分かりそうな感じだったもんなあ。もし、誰かがインフルエンザ第1号になったとして、そのあと残念ながら日本で流行してしまったとする。そのとき「ネットで実名あばき」なんてされてしまっていたら、どいいうことになるか、想像は易いだろう。ありえない酷いことが、その第1号の方に浴びせかけられるに違いなのだ。


 こっからいきなりクダけます。
 柄にもなくアレコレ考えてしまったけれど、うーーーん……どうにも、焦れない。騒いだって仕方ないじゃないか、と居直ってしまう。私は決して頑丈なほうではないけれど、インフルエンザにだけは生まれてこの方、かかったこともなければ、予防注射受けたことすらないからなあ。
 それに、あのオソマツな舛添厚労大臣と横浜市長のやりとりが、ねえ。あんなの見せられるほうが、返って免疫力落ちちゃいそうじゃないか。
 もちろん、お年寄りや乳幼児がご家族にいる方、高齢者施設や保育園の方々の懸念・心配は察するに余りある。ただ、なんたって相手は見えないウィルス。テレビの中の喧騒を見るだに、冒頭の小学生の言葉が思い返されてならないのだ。




○追記
 ここで思いっきり失礼千万な見たままを書きます。
 私は横浜市長中田宏の会見時のご面相に驚愕してしまった。なんていうかですね……いきなり「ボンッ!」と煙出して黒いマントとか翻して「ケケケッ」とかいいだしちゃいそうな雰囲気。コウモリとか後ろに何匹が飛ばして。そう、なんだか「悪魔」みたいな雰囲気、漂ってませんでした? 眉間にしわを寄せ、不愉快の極みといった表情で「大臣こそ落ち着かれたほうがいいですねっ」と、吐き捨てるように発言したときの表情、本当に怖い。横浜市民はあのかたオッケーなのだろうか。


○追記2
 2日の読売新聞によると、保護者や近隣の住民から「疑いのある学生の通学ルートは!? 」「菌をばらまいていないか?」などという苦情・問い合わせが学校に50件近くあったのだそう。やっぱりなあ……そんなこと考えたって仕方ないじゃないか。どこだって菌もウィルスもいる。もし自分の近所で発症があったら、というシュミレーションを各市・各区でゼヒやって頂きたい。関東大震災のあとの流言と一緒だ。
 天災が起きたときって、「誰かにこのぶつけようのない怒りをぶつけたい」という卑劣なる転嫁欲求が必ず起こる。これが、一番恐ろしい。




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