七月歌舞伎座・そしておくやみ

キヨシロー

 カッコいい大人だなあ、と思っていた。


 私が忌野清志郎を知ったのは小学校6年のとき、今から22年前のこと。人気だった深夜番組『やっぱり猫が好き』のエンディング・テーマを歌っていたのだ。
 曲はロック・バージョンの『サン・トワ・マミー』、バック・イラストに桜沢エリカ。番組はシチュエーション・コメディで、こんなに有名になる前の三谷幸喜が脚本をよく書いていた。出演は三人のみ、もたいまさこ室井滋小林聡美が三姉妹という設定。室井滋も、まだ全然有名じゃなかった。改めて考えてみると、えっらいオシャレで先見の明ありありのキャスティング。



 特別なファンでも、彼の曲に詳しいわけでも全然ないけれど、なんだか、とても哀しい。
「イエーイ!」といわれて、素直に「イエーイ!」とノレる数少ないひとだった。ライブに行ったわけじゃないけれど、テレビから聞こえる彼の「イエーイ!」とか「愛し合ってるかーい!」という声で、即座にテンションが上がるのが不思議だった。今日、それがなんでなのか、考えてみた。


 あのひとの「イエーイ!」は、それだけでもう音楽なんだと思う。優れた音楽家が楽器を「ポーン!」とひとつ奏でるだけで、聴き手を瞬間「ウワーッ!」とコーフンさせるのと同じことじゃないだろうか。
 泉谷しげるのコメントを聞いていたら、「観客に向かって『バカヤロー!』っていったのは彼が最初だった」ということを知った。うーん……「バカヤロー」って言葉の含むロック的な意味合いもあるけれど、発する間投詞すべてが、忌野さんの口から出ると音楽になるんだと思う。だから、「あり」なんだと思う。ゆえに、メッセージ性の強い歌をいくら歌っても、「あり」だったんだと思う。言葉を音楽に出来る人が、死んだ。
 矢野顕子さんの「心の美しさが歌にあらわれている人でした」というコメントが印象的。


 どうか、安らかに。





○さらに


成田屋の古いお弟子さんでらっしゃる市川升寿さんも亡くなられた。4月24日、享年74歳。ご冥福をお祈りします。




○七月大歌舞伎


 七月の歌舞伎座、決定しましたねえ。
 座長は坂東玉三郎、題して「日本の夏、鏡花の夏」。いや……勝手に私が題しただけなんですが。なんとなく玉三郎さんが色っぽい浴衣姿で花火かなんかをバックにしている図が浮かんでしまって。
 やってくれます大和屋、昼に『海神別荘』、夜に『天守物語』。公子、図書之助はやっぱり、というか市川海老蔵。そうそう亀姫が勘太郎だそうです。たんなる贔屓勝手でいいますが、菊之助で観たかったなあ。
 まあこの二本立て再演も嬉しいんですが、『日本橋』をもう一度やってもらえないもんだろうか。清葉役者がいないから難しいのは百も承知なんだけれども。勿体な過ぎると思いつつ、ニンの人がどーーしても思いつかない。特別出演で山本富士子しかいないんじゃないだろうか。葛木は仁左衛門、お千世なら……京妙でどうでしょう。
 そのほか、昼の部に幸田露伴の『五重塔』、勘太郎獅童の主演。これ知らないなあ。夜は『夏祭』で、団七が海老蔵、お辰が勘太郎! 昨年Bunkamuraでお辰デビューしてから一年で歌舞伎座のスピード出世。お梶、琴浦は誰がやるのだろう。ひょとするとだけど、三階さんの抜擢があったら……いいなあ。
 チケット争奪戦、熾烈を極めそう……。




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