改稿・「安蘭けい」に驚く〜ファンとスターの幸福な関係

とうこさん、ってのが愛称だそう

請われる 大型連休もとうとう終わり、仕事始めの東京は霧雨でスタート。


 この「大型連休」って、NHK独得の言い回しなんだそうですね。ゴールデンウィーク、ってのはどこかのテレビマンだか編集者がその昔につくった言葉なんだそう。ゆえに、公営放送では頑なに今でも「大型連休」と呼ぶのだそうだ。


 ひと昔は「飛び石連休」っていいましたね。一日だけポッと学校に行く、あの感じ。あの、不思議に浮かれている感じが、好きだった。みんな放課後、そして明日、「何して遊ぼうか」しか考えてないような独得の感じ。と、つらつら書き進めてますが、こんな呆けた雰囲気は少数派なのかもしれない。ところは仙台の小学校、今から25年以上前の話だもの。でも、あの非日常的な空気を吸えたのは、得がたいことだった。
 今日は門外漢のタカラヅカ・印象メモを。舞台じゃなく、テレビですが。


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 TBS『キミハ・ブレイク』で放送されていた宝塚のスペシャルが、興味深かった。途中から見たので全容は分からないけれども、雪組総出演でのQ&A形式・バラエティ。
 宝塚のことは、まったく知らない。劇場はおろか、テレビでもキチンと見たことがない。けれど、歌舞伎好きの友人たちから常々「歌舞伎が好きなら絶対ハマるから!」と熱っぽく言われていたのだけれど……うーん、ちょっとその理由分かってしまったような。


 安蘭けい、というかたの引退公演を追ったドキュメントも流されていたんですね。いや、もう、あはは。 
 あのですねえ。もう笑っちゃうぐらい、カーーーッコいいんですよ! わたしゃ驚いたよ。驚いた、というよりも、ビーーーックらこいた、って感じ。なんちゅうか……虚心坦懐に、目を丸くして見入ってしまった。


 出待ち、っていうんでしょうね。宝塚劇場に車で乗り付けた安蘭さんを一目見ようと、何百人ものファンが集っているわけです(引退当日はなんと6千人! 日本中から来たのだろう)。

 そこに「キキーッ!」とデカい車で乗りつけ、停まるや否や「ニューッ」と長い脚が出てきて、「サッ」とすべるように出てこられる安蘭けい。それとともに「キャーッ!!」湧き起こる歓声とドヨメキ……ああ、これぞまさにスター降臨! 
 その瞬間の、なんとインプレッシヴに光り輝いていたことか。もちろんリアルタイムでは全く知らないイメージの中の「日活スター」のようであった。テレビであれなら、本物はかくや。白いパンツに白のシャツ(ノット・ブラウス)、そして白のファーマフラーというそのイデタチ。私にはそのとき、安蘭さんが黒いサングラスを取る「チャッ、」という音が確かに聞こえた! 歯もキラリと光ったかのように思えてきた。
 ここまでわずかテレビでは2秒半ぐらいの出来事。「鮮烈にして秒殺」というフレーズが自然、脳裏に。



 私は何に驚いたのだろう……男ぶり? 伊達女ぶり(こんな言葉あんのか)? 倒錯的にアブストラクトな性的魅力?
 わっからない……。それが知りたくて詳しい友人にメールしたら、
「舞台を観ればいいんですよ……」
「安蘭さんのDVDはいくらでもお貸ししますよ……」
 という末恐ろしい返事が。いや、いーんです。歌舞伎やクラシックだけでも大変なのに、これ以上観劇の範囲を増やすなんて恐ろしくて……。




 さらに詳しい友人によると、
「引退公演中のトップの輝きというのは特別。宝塚の中でも特別ですよ。あの出待ちのカッコよさはすごいです。安蘭さんに限らず、あれを見てしまったらもう戻れませんよ」(30代前半・女性)
 とのこと。ふうううん……。



 スターの一定義として、
「あがめたてまつる者の憧憬と熱を、その一身に吸い取れるもの」
 ってのがあるんじゃないだろうか。
 思いっきり推測で書きますが、今、日本で最も純で、宗教的なまでに一途な思いをスターに寄せられるのは、宝塚ファンなのかもしれない。あんなふうに熱っぽく愛を捧げ、そしてスターも、先に書いた「日活スター」のようにクラシカルな、あえて悪い言い方をすれば「アナクロ」なスター然とした態度で受け止めあう関係が成立してしまう世界は他にないんじゃないだろうか。
(蛇足で書けば、歌舞伎の世界というのはもうちょっと現実的のように思う。ファンもタニマチも、もっと役者と近い。はっきりいってパトロン的側面もあるのだから)



(こちらは安蘭さんじゃないですよ、念のため)



 ヅカの専門誌に『宝塚おとめ』ってのがあるんですね、読んだことないんだけど。うーーーーん……急にその「おとめ」という言葉が指すものは、舞台に立つ人たちではなく、買っているファンたちのように思えてきた。スターを輝かすものは、ファンの思いに他ならない。おとめならではの純な思いが募るからこそ、「車から降りる安蘭けい」のカッコよさは成り立つのだ。星の光は恒星の反射。安蘭の「光」はこれすべて、周囲の「ファン=おとめ」による盲目的なまでに純化した崇拝的愛情の反映なのだろう。その相互性の凄さに、私は驚いたのだと思う。

 しかし……安蘭けいの輝きは尋常ではなかった。「ビカーッ!」という感じ、まさに「君の瞳は一万ボルト」。呆れられるのを覚悟で書くが、あの種の「光線」(私はオーラという変な手垢のついた言葉が嫌いだ)の最も凄かった人(そしてそれを崇め奉る人々の強い思いとの相互作用があいまったものが)、それすなわち太古に「アマテラス」と呼ばれた「何か」なのかもしれない。
 そんなことまで、一瞬類推してしまった。
「清く正しく美しく」というモットーは、ジェンヌたちのそれだけはなく、宝塚ファンの矜持でもあるのだろうな。



○付記

だからどうした、ってな話なんですが、「よく毎日こんな長い文章書いてますね……」と、半ばアキレ目線(?)で一部の方がおっしゃるんですが、私この手の「自分が思ったツラツラ」ってのは、基本イキオイで書けちゃうので全然時間はつかってないんです。と、意味ない勝手な弁明ですが。計ってみたが、今日のこのぐらいで25分ぐらい。それで、ちょっとアップするまでに5分ぐらい他のことやって、サッと読み直して手を加えて、写真なんか選んで計4〜50分ぐらいだろうか。やっぱり、だからどうした、ですね。失礼しました。




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