藤木直人の「目」、そして木村佳乃的芝居〜『夜光の階段』より
藤木直人は、本当に人を殺したことがあるんじゃないだろうか?
現在放送中のドラマ『夜光の階段』(テレ朝系)、野心家の美容師が、女を利用してのし上り、邪魔になったら次々と殺して……という松本清張原作のストーリー。
漫画家の友人、安彦麻理絵さんが
「主演の藤木直人が、いい!」
なーんて絶賛してるもんだから気になって。遅まきながら初めて観ましたが…………うん、ビックリした! とある一点に、私は驚かされた。
藤木直人の、人を殺すときの演技がいい。
うまい、というのじゃ、ない。妙に、リアル。変に、なまなましいのだ。
○暗い経験値のある目
この回では木村佳乃を思いっきり絞殺してたんですが……「目」が違う。
なんていうかな。
「このぐらい力入れないと、人は死なない」
「このぐらいの時間締めてないと、人は死なない」
そう熟知しているかのような目。
あの人の「目」には、こういう怖さがある。
愛玩具みたいな可愛さを持つ人々って、男にしろ女にしろ、いるもんです。ペットにしたくなるような人々。愛をただ享受することが仕事になる、いきもの。
それが突然、職業放棄する恐怖。
たまに飼い犬がその家の幼児を噛み殺してしまったり、パンダが見物客に襲い掛かったり、なんてニュースがありますね。そういうとき感じる、ある種の「嫌悪感」。
そういうものを、この人の殺害演技には感じる。
○女の感情をネガティブにエスカレートさせる男
この人は、女が「よしよし」としたくなるタイプの「いい男」だ。「私がなんでもしてあげる」「世間の荒波に直ちゃんはさらせないわ!」それがひいては「私のいうことだけを聞いてればいいのよ」と思わせてしまうような男。
そういう母性から庇護愛、さらには支配欲へと、女の感情をネガティヴにエスカレートさせるような男。そういう天分を、この人の外見には感じる。
そういう「甘さ」が、突如として牙を剥く怖さ。
寄生虫がホストの養分を吸い尽くして、次に移るため、その体を食い破るような残忍さがほとばしる瞬間。
そんな様々が、女を殺すときの「目」に詰まっている。そこに、私は唸った。
○そして大逆転の「歌」
なーんて結構マジメに「藤木、適役じゃーん」とか思ってたんですが、そんな余韻にゃ浸らせてくれませんよこのドラマは!
エンディングテーマをも藤木は担当してるんだが……あの、なんていうんですかね。コロッケなら4分ぐらいでモノマネ習得できちゃいそうな歌いっぷり。基本的に「ア」と「エ」の間の声で歌いきる感じ。アイドル時代のトシちゃんがそのまま大きくなったかのよう。野口五郎の暗さと田原俊彦の明るさが不思議に同居したシンギング。暗い情緒も吹っ飛びましたが……そう思う人ってひょっとしたら少ないのかも。「歌までいけるなんて、直人ますます最高!」そんな手放しな女、けっこういるんだろうなあ。
これがその藤木さんのCD。『クライム・オブ・ラブ』。訳して『愛の罪』。カップリングのタイトルがまたやってくれます。『いいんだぜ〜君がいてくれれば』。たまりません。作詞も手がけてらっしゃるとか。完璧です。
○付記〜思い切りのいい女優・木村佳乃
今回殺された木村佳乃、ええ、すばらしい死にっぷりでした。
この方、「自分を良くみせよう」という女優的なエゴイズムが皆無な人だなあ、と常々思っているんですね。今回も迷いはありません。首絞められた瞬間、「グエッ!」という引き潰されたカエルのような表情をあられもなく。ああ迷いのないその苦しみっぷり。
いや、いーんですよ。でもね、女優さんだと締められてる間も、目で体で自分を魅せたりなんかするわけです。
「うっ……苦しい……あっ、あんた……あたしの恩も忘れて……どうして……どうしてなのっ!?……い、いいわ……死んであげる……あなたが……好きだ……った……(ガクッ)」
みたいな表情演技する人、けっこう多いもの。
「殺してるのはあんたでも画面をさらうのはあたしよ!」
そんなエゴイズムが「ザッツ・女優」。
このひと、そーいうのまったくないんですね。見事。ホントに締められてたのかも。直人の「目」は、佳乃の受けの演技あってこそ光ったのかもしれない。
○メモ雑記
東京、肌寒い雨の日が続く。朝などちょっとヒーターが恋しい。パーカーを久々に出す。
こないだいい匂いがして上を見上げたら花が咲いていた。
こぼれんばかり。
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