K・ヘップバーンとK・ウィンスレット、そしてF・フォーセット
「マイケルは、音楽界のハワード・ヒューズみたいな人だった」
今日のJ-WAVE(東京ローカルFM)での、クリス・ペプラーの発言。
うまいことをいうなあ……。
アメリカの大実業家、そして数々の奇行で有名なハワード・ヒューズ。死して35年弱、なお語り継がれるアメリカの伝説。
マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の映画、『アビエイター』(2004)で彼の名前を知った人も多いかも。
単なる大実業家というだけでなく、ハワード・ヒューズはアメリカ国民の心の琴線にふれるスター性があったという(彼の主な産業が映画、そして航空機というところがポイントか)。
○キャサリンが惚れた男
なんたって、あのキャサリン・ヘップバーンが惚れた男だ。これだけで、分かる人は分かるだろう。タダもんじゃあない。アメリカが生んだ最高にして最大の演技派女優、アカデミー主演女優賞ノミネート12回(!)、そして受賞4回、さらにはそのすべてを「欠席」している大女優。その理由がいい。
「人が大勢いるところは嫌い」
それだけの理由。なんとまあ……カッコいいことか!
○そしてなぜかケイト・ウィンスレットに物申す
ここでいきなり余計なワルグチなんですが……ケイト(キャサリン・ヘップバーンの愛称)の粋さを思い出したら、もうひとりのケイトの野暮を書かずにいられない。彼女の先のアカデミー賞における、あのスピーチのことを!
『愛を読むひと』でオスカーを受賞したケイト・ウィンスレットのスピーチに、私はドン引きしてしまったのだ。もうミもフタもない言い方をしてしまうが……ヨーロッパの田舎モンのネーちゃんが「やっだ、もう、チョー嬉しい!」ってな感じでハシャぎまくっているようで、見るに耐えなかったのだ。
分かるんだけどね。あーいうハシャぎに身を任せるというのは、とっても楽しいことだって。しかし、
「こんなこと人生で二度あるか分からない! 今ここで堪能しなくてどうする!」
そんな気持ちがありありと見て取れちゃうってのは、素人のすることだ。一般人が結婚式でハシャぐのとは訳が違う。女優なんだからさ、「嬉しさダダ漏れ」なんてカッコ悪いことしないでほしい。
はい、ひとつ断言。女優というのは、すべての瞬間において「計算」がなくてはならないのだ。いつでも、女優。「素」(スッピンにあらず)なんて、絶対露わにしてはいけないのだ。そこまで自分を創っている人が、思わずみせてしまった「素の瞬間」というものこそ、価値がある。
ケイトのスピーチは尚も続く。
「私を今まで支えてくれた、誰それに感謝……」
永遠に続くかと思われた人名の羅列など、「私オスカー取ったらこー言おうって考えてきたのよー! この人もあの人も、もー全部いっちゃうから!」
そんな用意周到性が漂って、これまた野暮の骨頂。
性格のいい方は「嬉しいんだねえ、よかったねえ」と相好を崩されるんだろうが、私は性格がねじ曲がっているので「女優としての矜持が足りない!」とつい、イライラしてしまうのだった。
ああ、キャサリン・ヘップバーンの「欠席」を思い出したら、余計なことまで書いてしまった。
○訃報
マイケルと同じ日に、ファラ・フォーセットが死亡。がんの末期治療を続けていて、パートナーのライアン・オニールに看取られての最期だったという。
このふたりの関係はちょっと前からネットでニュースになっていた。「がんとはこういうものよ」と語りつつ、その闘病を綴ったドキュメントがアメリカで放送され、話題になっていたのだとか。
正直、本家『チャーリーズ・エンジェル』はまだ生まれておらずピンと来ないのだが、後追いで観た『女たちの迷路』というテレビ映画(日本ではビデオ化。大きなレンタル屋だと置いてあるところもあるかも?)を観て、彼女のイメージが変わった。
周りの年上からの情報は一様にこんな感じ。
「ファラってね、みーんなあの髪型に憧れたんだよ」
そういう、ファッションリーダー的イメージしかなかったんだが、この作品ではなかなかの演技力で、強い印象を残した。筋はシンプル、息子の妻となったファラを、姑のコリン・デューハーストが認めようとしないというもの。決定的な溝ができたのち、姑は倒れ寝たきりになる。そしてファラは看病に当たり、ようやく心が通ったかと思ったとき、姑は死ぬ、という話。
そのとき、ファラは走る。その走る体に、やり切れなさ、悔しさが充満している。その走りが、よかった。『チャーリーズ・エンジェル』はよかっただろうな、と思わせる伸びやかで均整の取れたスタイル。そこに、哀しみがつまっていた。
痛みから解放されたファラ、どうぞ安らかに。
○付記
東麻布にて。す、すかいすくれいぱー……。マンションの売り文句で、「東京タワーが窓から!」なんてのがありますが、見えすぎるのもちょっとね。
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