メリル・ストリープ「第2位」の怪
メリル・ストリープが2位とは!
文藝春秋・季刊夏号の『映画が人生を教えてくれた』というムックでのアンケートに、驚愕。
「心に残る映画スター・ベスト10」というコーナーで、洋画・女優編の2位に、あのメリルが選ばれているのだ。
ええ、えええええええええぇぇ…………。
なつかしの「うっそぉ・ほんとぉ〜!?」というフレーズが脳内リフレイン。この驚き、分かる人には分かってもらえるんじゃないだろうか。
なんせ、並びが凄い。
1位:オードリー・ヘップバーン
ときて、
2位:メリル・ストリープ
ときて、
3位:ヴィヴィアン・リー
とくる。そしその後が、イングリッド・バーグマン、グレース・ケリー、ソフィア・ローレン、マリリン・モンロー……。
○アンケートをした人たちとは?
こんなことが許されていいのだろうか。
ちなみにアンケートに答えているのは「文藝春秋」読者、そしてこのムックの執筆陣。総数は1048通だという。執筆陣は相当に、お堅い。作家が多くて、童門冬二、浅田次郎、関川夏央、片岡義男……それに、小林信彦、赤瀬川源平、長部日出雄、黒鉄ヒロシといった、「文春」おなじみの皆さん。さらには蓮實重彦を頂点とする学者、教授、弁護士、評論家といった面々。そこに「ちょっとポップほしいよね」とかいう編集のつぶやきが聞こえそうな感じで、高田文夫、中野翠、みうらじゅんといった人たちが名を連ねる。なんだか名前列記してたら、疲れた。
○集計のマジック
うーーん……どういう集計の仕方をしたんだろう。
「好きな女優を3人挙げよ」
とかだったんだろうなあ。それで
「1位=3点、2位=2点、3位=1点」
という方式だったに違いない! 1位=大好きな人、2位=自分だけの「とっておき」、とここまできて、「うーん……あとひとり……まあ、メリルでも入れておくか」ってな心理が働いたんじゃないだろうか。
特に、読者ね。文春編集者に読まれるという前提でアンケートを書くうち、変な「ミエ」が働いてしまった感が濃厚に漂う。
名女優、といって誰からもミソつけられなさそうな人。
とりあえず映画見る目を疑われなさそうな人。
そして最近の映画も観てるもんね、ということを証明できる人。
○「スター」と「アクトレス」
そりゃメリルくるわ。「文藝春秋」の読者層は多分、60代〜80代ってな感じだろう。この辺の「いい人」たちがこぞってメリルを好きなのは、判る気がする。多分『マディソン郡の橋』と『マンマ・ミーア』が、票獲得に相当の働きをしたに違いない。後者は「美智子様もご鑑賞、そしてにこやかに美智子様とメリルはご談笑」というのもポイントだろう。
いや、メリルが嫌いじゃないんです。でもさあ、なんたってアンケート・タイトルが「心に残るスター」なんだもの。そ・こ・に、私は引っ掛かるのだ。私はこの方、アクトレスだとは思うがスターだと思ったことは一度もない。
メリル・ストリープの芝居からは、「どんな役でも演技力で演じられる、演じてみせる!」という信念のようなものを感じる。まあ実際どんな役でも、そこそこ、こなしてしまう。それは、アクトレスだ。役者だ。
けれどスターというのは、Aという役はぜんっぜんダメでも、Bという役だと、「もうこのひとしか絶対できないっ! このひとじゃなきゃダメっ!」という決定感があるものだ。そういう輝きを放ってこそ、スターだと私は思っている。
そこが、メリルには希薄だ。メリルが素晴らしい演技をみせた映画は数多くあるが、「これがもしグレン・クロースだったら……」「スーザン・サランドンでも観たいな」なんてことを往々にして思ってしまう。『ローマの休日』は、『カサブランカ』は、『風と共に去りぬ』は……という引き合いのたとえは、ちょっと残酷すぎるか。
と、まあ……相も変わらず「だからなんなんだよ」というような日記でした。
○追記
Glenn close,って、グレン・クローズって日本だと表記されていることが多いのか? 英語の発音的にはグレン・クロースだと思うのだけれど。
○スナップ
ネットニュースからあんまり可愛らしくて拾ってしまった。カバも暑いんだそうだ。今日は梅雨の中休み、暑い暑い。
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