ロシア大使館のペトローヴァさん、ありがとう

聖ワシリイ大聖堂

 最初にいっときますが、本当にくっだらない話ですよ。
 あのですね、日本でいえば「山田太郎」「佐藤良子」みたいな、超ありがちというか、平凡というか、そういう名前ってあるでしょう。 英語だと「ジョン・スミス」とかね。
 これの……ロシア版ってなんなのか、唐突に気になってしまって、困っているんですよ。知るかってな話でしょうが。


 なぜロシアか、といわれてもさらに困っちゃうが……疑問に思っちゃったのだから仕方ない。
 イワンとか(読んだことはないが誰もが知っている名著『イワンのばか』の功績は大きい)、ミハイル(この愛称がミーシャ)とかアレクセイとか、名前はまあまあ思いつくんだけど……よく聞く苗字となると、さっぱり。
 

 ていうか、ロシアで同じ苗字の人って、滅多に聞かないよなあ。
 ホロヴィッツさんとかアシュケナージさんって、ロシアではよくある名前なんだろうか。ドストエフスキーさんとかチェルヌイシェフスキーさんとかソルジェニーツィンさんとかって、向こうではありがちな名前なんだろうか。バレエの先生はやっぱりコルパコワさんなんだろうか。違う。
 ロシア語を習っていた知人に聞いてみたが、「考えたこともなかった」とひとこと。そのかたも「そうだね、ありがちな名前は思いつくけど、苗字はちょっと……」とのこと。
 超広大な国だから名前もバラバラ、というのもあるんだろうなあ。大使館にこんなことで質問の電話していいもんだろうか。








 やってみました。


 白央篤司33歳、好きな言葉は「ものはためし」です。
 

ロシア大使館に本当に電話中)


大使館「(ガチャ)ハロー」


 ええっ !? ハ、ハロー? 
 ていうか最初ロシア語で話し出したんですけどね。当たり前なのか。超慌てたがこんなことで挫けてはいられない。それにガチャ切りなんてしたら逆探知で家突き止められて情報部に始末されそう。つたない英語でがんばってみましょう。
 以下、私の拙い英語力での会話を日本語で再現。


白央「あ、わたしは、たんなる、日本の一市民です。(決してアヤしいモンじゃありません、ってなフレーズが思い浮かぶが、訳せず無念なり)。私はロシアの文化に興味があります(大嘘もいいところだ)。それで質問があって、電話しました。答えてくれますか?」
ロシアの女の人「オゥ……ア……OK」
白央「タンキュー、タンキュー(thをなぜか強調してしまった)。ロシアの本を読んでいると、名前のほうはイワンとか、ミハイルとか、同じような名前がありますが、苗字はいろいろ、たっくさんで、あります。苗字で、よくあるものって、あるんですか?」
(このへんの英語力のプアさ加減に我ながら愕然とする。情けなかった……)
ロシア側「ユー ミーン、ポピュラーネーム? そうねえ……イワノフ、ペトロフ、コーズィニエッツオでしょうか……」


 なんだよ「コーズィニエッツオ」ってとか思いながらも、サンキューサンキューといいながらワードで必死にメモをとっていた。「ロシアに興味が」とかいっときながら、「スパシーバ」のひとことも出なかった。いきなり「ペトロ麩」と変換されてしまい笑いを押し殺すのに苦労する。姉妹品で「キエ麩」とかね。「コーズィニエッツオ」は私がうまく聞き取れなかったので、全然違う発音かもしれない。


白央「ありがとうございます! お名前を聞いていいですか?」
ロシア側「私はただの秘書なんで」
白央「あなたの苗字も教えてほしいんです!」
ロシア「(クスッと笑って)私はペトローヴァです」
白央「ありがとうペトローヴァさん!」
ロシア「バイバイ」


 こうして超個人的な日露文化交渉は終った。まさかこんなに簡単に教えてもらえるとは……やはり聞いてみるものだ。人生直球が一番。いい迷惑。


 どうでもいいついでに。
 ピョートル・クロポトキンというロシア人がいるんですね。20世紀初めのアナーキスト。なんかこの「クロポトキン」という名前が、変に私好きで。なんか昔の便秘薬とか強壮剤とかでありそう。黒イモリとか焼いて生薬たっぷりで。あと「コワレフスカヤ」って苗字も好き。名古屋の田舎のほうにいる心配性の婆ちゃんの口癖のよう。何かで知った「ポリャコフ」「ポポレコフ」ってのも印象的。新宿・末広亭とかにセットで出したいですね。「青空ポリャコフ・ポポレコフ」とかで。多分ポポレコフが突っ込みだと思う。
 そうそう、大好きな漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で昔、「それでは解説はロシアの科学者、スケベビッチ・チンポコスキー先生にお願いしましょう」というギャグがあったのを思い出す。秋本治先生には何百回も腹ちぎれるほど笑わされたなあ。
 ジョージ・ホイニンゲン=ヒューンというロシアの写真家もいるが、すっごいファンキーでイッちゃってる写真撮ってくれそうと勝手に期待している。赤塚不二夫先生の漫画に出てきそうなイメージ。鼻水とかたらして「最高なりよー」とかいいつつピョンピョン跳ねてシャッター押してそう。戦前のえっらいオシャレな写真家らしいんですけどね。
 今日もまあ「だからなんだよ」ってな日記でした。ちなみに私が人生で一番人から言われているセリフは「バカじゃないの」です。



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