米原万里さんのエッセイから

ヘンゼルとグレーテル

 最近、米原万里さんのエッセイにハマッている。
 2006年に急逝された作家で、元々はロシア語の同時通訳をされていた方だ。『週刊文春』の書評欄でおなじみの方も多いだろう。
 昨夜手にとってやめられなかった『旅行者の朝食』(文春文庫・傑作!)の中に、童話『ヘンゼルとグレーテル』に関する一章があった。
 本当に久しぶりにこの童話の筋を思い出したが……どーにも不思議なポイントが印象に残ったので、書き留めておきたい。

 深い森の中、魔法使いの老婆が住んでいる。迷い込んだ幼き兄妹、ヘンゼルとグレーテルを捕らえる老婆。 妹は召使に、兄はとって食おうと画策する……この最後のくだりに、私は驚いた。いや、感嘆してしまったのだ。


 私は34歳になる男だが、このところ「焼肉」に対する情熱というのが、20代のときのそれと如実に変化しているのを最近とみに感じる。切実なほどに。
 ひと月に1度、いやふた月に1度ぐらいでいいや、ってなもんである。もちろん個人差はあるだろうけれど。

 しかしこの老婆はいくら魔法使いとはいえ、少年を、丸ごと食ってしまおうとするのである。うひゃー。想像を絶する食欲とバイタリティではないだろうか。昔のことだから老婆といっても60歳そこそこぐらいかもしれないけれども、それにしたって、凄い。うちの62歳になる父・カズヒサなんて50代から好物といえば「湯豆腐」だというのに。悲しいものね黄色人種

 しかもである。現代の生肉店で売ってるような調理しやすい「お肉」じゃあないのだ。まるのまんま。もし私がこの老魔女だったら、「そりゃ若い肉はちょっと食べたい。でも……これからさばいて煮込むなり焼くなりしなきゃなんないのか……うへー」と、面倒臭さのあまり断念してしまうに違いない。さすがゲルマン系の老女はタフネスが違う……自分でも変だと思うが、そんなところに感心してしまった。
 あ、魔法でちょちょいと調理するのかも。


旅行者の朝食

旅行者の朝食

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