中村紘子デビュー50周年

中村紘子

 10月24日の産経ニュースより。

9月16日、東京都千代田区の帝国ホテル
中村紘子デビュー50周年パーティ 「また受験生のような生活です」
 「年をとったらピアノを弾かなくて済むかと思っていたんですけど、年をとるほど忙しくなるんです。今も時間さえあればピアノの練習をしています」
 半世紀以上も鍵盤をたたき、いまだに日本の第一人者の地位を譲らない中村紘子さん(65)。ちょっとおどけた語り口の下に、揺るぎない信念が垣間見えた。

(太字部分筆者)


■■■■■■■■■■■■■■■■

○「鍵盤は叩くものではなく……」

 許せん!
 文末に「竹中文」と署名がある。産経の記者なのかどうか分からないが……中村紘子に対する基本的な情報、というかピアノに対する基礎的な感覚が欠けているとしか思えない。中村紘子は今まで著した本やコメントの中で、幾度となく
「ピアノは叩くものではなく、弾くものです」
 というコメントを残している。戦後何十年もピアノとその文化を伝えてきたけれど、未だにこの「ピアノを叩く」という概念が変わってくれない……という嘆きを露わにしているというのに。
 ああ、どうしてこの記事を書くのが私じゃないんだろう! 
 はい、すべてはつまらない嫉妬なんです(笑)。私が書きたかった……と、こっからいきなり回想になる。


○「追っかけ」、やってました


 小さい頃、NHKで『ピアノとともに』というピアノ教授番組をやっていた。
 その講師が中村紘子で、幼い私は見るなり一発で「ポーッ!」とのぼせ上がっちゃったんですねー。綺麗な人が美しい音楽を奏でている……まだ10歳にもならない私は、フラフラと魔法に掛かったかのように母・フジエに願い出ていた。
「おかあさん、ピアノ習いたい……」

 それから高校生ぐらいまで、私は正真正銘の「追っかけ」だった。
 お小遣いをはたいてはCDを買い、コンサートは出来る限りフォロー。NHKで放映されたあるリサイタルには、私が一心不乱に拍手している姿がキッチリ映し出されたこともある。さらには、花束を持って楽屋まで押しかけちゃったりなんかもしたんだなこれが。しかし……思い出しても笑っちゃうが、舞台袖から颯爽と戻られたヒロコサマと目が合った刹那、私は身がすくんでしまって、動けなくなっちゃったのだ! そうこうするうち、ドーッと取り巻きや私と同じようなファンに囲まれ、あのお方はどこかに消えてしまわれた……あのとき、渡せなかった花束を私はどうしたっけ。ああ、青春だなあ。でもないか。
 大学に入ってから自分が愛するピアニズムとの齟齬を感じ、さすがにファン熱も冷めていった。けれど、幼少期に刷り込まれた思慕というのは除きがたいもの。
 いつか、インタビューしてみたい。もう、目が合っても怖気づかないほどには「スレて」きたのだから。


○付記

 中村さんはデビュー50周年ということで、近頃集中的にマスコミに登場されていた。『婦人公論』で茂木健一郎氏と対談されていたが、そのこぼれ話がおかしかったのでメモしておきたい。
 茂木氏のブログの6月24日版に、その日のことが書かれている。要約すると、


1:中村さんのピアノの上にリストの自筆の手紙を発見した茂木氏。「あっ、リストだ!」
2:それを受けて中村さん「そういやここにもあったわよ、リストの自筆」引き出しの中からやおら一枚の髪を取り出す。
3:「わあすごい」と喜ぶ茂木氏。
4:こともなげに「じゃあ、それあげるわよ」と中村氏。
5:「ええええええ」

 これでこそ中村紘子




○記録
(先の記事の続き)

 会場には、音楽がちりばめられた。中村さんがブラームス作曲の「ハンガリー舞曲第1番」など2曲を披露すると、ソプラノ歌手の佐藤しのぶさんと、テノール歌手の錦織健さんは、オペラ「椿姫」の劇中歌「乾杯の歌」で祝福した。

 佐藤さんは「中村さんは子供のころからのあこがれの人。これからも私たちの指針となり、アーティストとしても、女性としても輝いてほしい」と透きとおる声でたたえた。

 旧知の仲間もお祝いに駆けつけた。チェリスト堤剛(つよし)さんは「すばらしい先生や環境に恵まれたことは事実だが、血のにじむ努力もした。音楽家は華やかな舞台の裏で準備や研究を絶え間なく続けなければならない。私とは良き友であり、腕を競いあう仲間だった」と、天才少女として鮮烈なデビューを飾ったピアニストの知られざる日常を語った。

 中村さんはショパンチャイコフスキーの2大コンクールの審査員を務めるなど世界を舞台に活躍。その経歴は華やかだが、制作意欲はいまだに旺盛だ。9月にはデビュー50周年を記念したCDセットでリリース。休む間もなく、コンサートで47都道府県を飛び回る。

 「ひたすらにまるで受験生のようにレコーディングをしてきました。ようやくCDができて、『バンザーイ』と思ったのですが、今後はコンサート。結局、また受験生のような生活です」(竹中文)

こちらもよろしく・ごはんブログ→「白央篤司の独酌日記


つぶやいてますよ、けっこう。
twitterやってます https://twitter.com/hakuo416


○お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815


○ご意見などはこちらまで→hakuoatsushi@gmail.com