名脇役と名監督の死

日生のおばちゃん

古い日本映画ファンしか
知らないような女優さんだろうが、
中北千枝子さんが亡くなられた。79歳。

成瀬巳喜男の映画では常連の俳優だった。
生活に疲れた女、意地っ張りで可愛げのない女、
ひねくれた女、ひがむ女……成瀬独特の
「やるせない」空気を醸し出すのには
欠かせないキャラクターだったように思う。
『山の音』での、家と親に縛られ鬱屈した
女の存在感は圧倒的な暗さだった。


それだけが持ち味となることなく
器用にコメディーもこなされる女優さんだった。
東宝の名プロデューサー田中友幸夫人となり
実生活では大変幸せに暮らされている余裕と自信が、
どんな女の役でもこなされる幅の広さに
繋がったのかもしれない。


また小津や成瀬の世界が伝説のものとなっていく。
今年は桜むつ子さんも亡くなられ
寂しい限り。


世界的傑作を脇で支えた名優達への追悼や尊敬が
日本映画界は余りに少ないと思うのは
私だけだろうか。


などと感慨にふけっていれば
ビックリ『ウエスト・サイド・ストーリー』
サウンド・オブ・ミュージック』の
ロバート・ワイズ監督まで亡くなっていたとは。91歳。
両作品ともちっとも私好みじゃないのだが
どちらも映画史に残るインパクトを
持った作品だということは分かる。


今やってるミュージカルで、少しでもこの両作品の
影響や、悪く言えばパクリのないものって
ほとんどないんじゃないか。
そういう点でキューブリックとかと並ぶ天才だと思う。
だけどロバート・ワイズのことを賛美するのは
ほんの一部のミュージカル・ファンばかり。
ミュージカルとかコメディって本当に軽んじられる
ジャンルだなあ。そこに腹が立つ。

はい、今日はどっちの日記も突然の訃報に動揺して
筋道立てて書けてません。反省。