アポロンの地獄

パゾリーニ映画における「男達」というのは
実に天衣無縫でノビノビした表情・肢体を
スクリーンの上にさらけ出す。それはもう駄々っ子のごとく。
伝説上の神も王も奴隷も子供のよう。
やっぱりそれって、俳優達にとってパゾリーニは、
私的にも公的にも「庇護者」で
あることが多かったからだろうな。
つまりは「母親的監督」だったんだと思う。
パゾリーニの演出って映画という世界で
「近親相姦におよぶ母」なんじゃないだろうか。
カメラはパゾリーニの目となり
オイディプスを視姦する。
映像中に多数出現する彼の毛の生えた胸、足の接写が
無造作にエロティックなのはそういうことだと思う。
かような状況ゆえ、パゾリーニの映画に出る
「女優」はシルヴァーナ・マンガーノアリダ・ヴァリといった
超女性、圧倒的個性がなくては演技者として成り立たない。
彼女達もはや女優ではなく女形なのだ。そう、この世界は
もはや「パゾリーニ歌舞伎」なのだ!