リズ、まだ早いよ

まだバートンが好きだったなんて…

 ちょい前のニュースですが「リズ危篤」の報が。
あんなものすごい毀誉褒貶の人生で73歳まで生きてれば
そりゃあ体力も弱るだろう。逆に言えばその歳まで
「有名人」として生きてきたのだから
ものすごいパワーなんだよなあ。
(セレブレティという言葉って
ものすごく今値崩れしてるのであえて日本語で)


映画好きなら「絶世の美女」「スキャンダルの女王」として名高い彼女だが
私がはじめて彼女を知ったのは、今は懐かしきNHKの世界名作劇場
(休日の朝とか夜にやってたシリーズ)で放映された
『陽のあたる場所』ですね、セオドア・ドライザーの小説を映画化したあれだ。


モノクロの画面の中に輝く彼女は本当に綺麗だった。
それと時をおなじくして発売されたのが
エリザベス・テイラーの挑戦―私が太った理由、痩せた方法―」とかいう
自身の著作。表紙は「百貫デブ」となった彼女がダイエットをして
不死鳥の如く「美女」に蘇った美しき中年の彼女の写真で、
中には衝撃的、いや露悪的といいっていいほどに
ダイエット以前の、太りきった「醜悪」な写真が満載で度肝を抜かれたものだ。


 いま「醜悪」という言葉を使ったのは嘲笑する意味ではない。
この本を読めば、彼女がいかに当時の精神状態を「最低」と認識し、
ネガティブに自分を追い込んで
「もう美人なんて辞めてやるわッ!」とブチ切れ
「醜くなってやる醜くなってやる!!」という
負の輪廻にハマっていたかに気づき、冷静に見つめていたかが分かる。
 そういった自分の精神状態を含めた上で、
「そんな自分はなんて醜悪なんだろう。反省と、今後の自戒の意味を込めて
私はブス写真を掲載するわ!」という心意気が感じられたので
「醜悪」という表現を使ったのだ。
 

なんでそんなことワザワザ書いたかって言うと、
「醜悪」という状態をしっかり認識していないかぎり、
絶対に「美」の方向へ向かうことってできないんじゃないかと
思うからなんだよね。精神的に病んでる人が
いくら思いどおりのスタイルやファッションを手に入れても輝かないように。
「美」というものは、そのとおりとても抽象的なもので、
「醜悪」なるものは、とても具象的なもののような気がするこの頃。
現代って「こうなりたい」という夢想ばかりが先行していて、
「こうはなりたくない」っていう現実がものすごくおろそかにされているでしょう。
「あれがほしい、だからお金借りちゃえ」みたいな生き方が増加しているのって、
美的な生き方を目指してるのに、「醜悪」ということを知らないあまり、
結果いつまでもたどり着けない迷路のようなもんじゃないか。
メビウスの輪をたどるラットのように。


なーんて小難しいことを考えたり。急に考え出すとと止まらないんだよね。


しっかしエリザベス・テイラーって、「中年からのリニューアル美人」
(いろんなお直しを含めた意味で)というスタイル(?)に
市民権を与えた先鋒者じゃないだろうか。
「あ、いいのね、整形だのエステだの金かけたダイエットだのして美に執着しても」
というコンセンサスね。ほんのつい最近までは、妙齢の女性がおおっぴらに
「美」にこだわってお金を使うなんてのを知られるのは
はしたなく恥ずかしいことだったように思う。
なんかやってても「なんにもしてないのよお」と
シラを切る人が多かったんじゃないか。女優でさえも。
 

 それがこの本ではやれ「グレープフルーツダイエット」や「ヨーグルトダイエット」、
美容体操やカロリーコントロールまで様々な美容法が提唱されていた。
まあ「さすがハリウッド女優ねえ」という認識で一般の読者は読んでいただろうが、
潜在的に、プロ、アマ含め、そのへんの意識改革(そんなたいしたものか)を
インパクトで打ち出した人だと思う。
(それほどの掲載されている「醜悪」写真はすごかった)
「あ、こっからでも綺麗に戻れるのね」という小さな誤解、いや希望を
みんなに与えた部分あったと思うな。それ以降の、各界女性有名人の
「私はこんなことやってキレイをキープしてるのよ」ビジネス隆盛はいうべくもない。


 まあこの方さすがにバケモノで、
「なんだいつでもアタシ綺麗に戻れんじゃん」という変な学習をしたようで
その後もブス→美人、美人→ブスの「ビューティ・サーフィン」を
随分繰り返していたように思う。それが体力低下に繋がってんだろうなあ。
あ、ダメですよ「どうせ痩せるときはドラッグ使ってんのよ」とか思っちゃ。


 もうすこし長生きして欲しいと思うのは酷かなあ。
うーんでも、リズ! まだハドソンに呼ばれちゃやだよ。


●【ロサンゼルス】米女優エリザベス・テーラー(73)が、
生命の危機に直面していると米誌グローブが報じた。
公の場に姿をみせたのは、今年3月にハリウッドで行われた
歌手エルトン・ジョンエイズ基金のパーティーが最後。
5月に愛犬シュガーが死んでからは重いうつ病にかかって自宅にこもりきりになった。
この1カ月はベッドから起き上がることもできない状態で、
1日の大半を寝てすごしているという。
 関係者は、テーラーは死期が近いと確信していると指摘。
「彼女はすべてに関心を失い、生きる意欲を失い、死ぬ準備をしているかのようだ」と
コメントしている。また葬儀も計画し、元夫リチャード・バートン
隣に埋葬されることを検討しているという。
 テーラーは長年骨の病気や背中の激痛に苦しみ、
97年には脳腫瘍(しゅよう)、00年に肺炎で入院した。
昨年は背骨を骨折した上、呼吸が困難になり、うっ血性心臓疾患と診断されていた。
(日刊スポーツ) - 10月3日9時32分更新