映画『ジョージ・マイケル ―素顔の告白―』

また日本来ないかな

相変わらずの秋雨の中、試写へ京橋へ。
もうすっかり肌寒く今年はじめてレザージャケットをはおる。


映画『ジョージ・マイケル ―素顔の告白―』
GEORGE MICHAEL a different story


ジョージ・マイケルのすべてが今明かされる!」
というキャッチでしたが、この人なんにも
隠してないんじゃないかと思うんですけど(笑)。
まあどんなもんかいと思って拝見しましたが、いやー面白かった。満足。
歌の力ってすんごいですね。パイプ・オルガンの前奏が合って
軽やかにアコースティック・ギターが鳴り出す「FAITH」かかった途端に
パーッと昔の興奮思い出しました。
「なんだこれはーーッ!」と感動した中学生の頃。
どうやってかき集めたかも忘れたけど、
3000円握りしめて当時住んでた川越のCD屋
ダ・カーポ」に走ったのを覚えてます。あはは。


ジョージ・マイケルを初めて聴いたのは小4の頃、
懐かしの「ベスト・ヒット・USA」で聴いたんだと思う。
「WHAM!」、いっぺんで好きだ!と思ったなあ、
ああ、ついでに「サイキック・マジック」GIオレンジなんて思い出したりして(笑)。
テレビの前でお母さんに「シーーッ!」とかいいながら
テープレコーダー回してたことまで心はプレイバック。録音中お父さん帰ってきて
台無しになって怒ったりして。TV音声入る「ラジカセ」すら珍しい時代でした。


そんなノスタルジー溢れる当時のクリップ満載で楽しいんですが、
ダンスも映像効果もぜーんぶ人間のアクションで行われてるのが
中々に新鮮だったりして怖いですね。
かつての相棒、アンドリューをひっさびさに見ましたが
見事なこっぱげで驚いたのなんの。ああ、イタリア系の美男だったのにねえ。
「当時アンドリューのこと好きだったの?」というインタビューに答えるジョージ、
「そんなこと絶対無い! 僕のタイプじゃ全然ないもの、彼は…可愛すぎるから」という
答え最高だね。分かってるわ求められていることが。さすが大スター。


まあ冗談はともかく、ゲイであることを秘密にして(疑惑報道もひどかったけど)、
スターとして生きてきた苦労、エイズで恋人を亡くしていること、
レコード会社との軋轢、政治的発言やプロパガンダ的クリップを
製作したことに対するバッシングなど、今まで語られなかった「ダークサイド」を
一気に告白する、というのがこの映画の骨子になっている。
この手のセルフ・ドキュメンタリーって、
「自分はこんなにかわいそうだった」というものになりがちだけど、
当時彼と反発していた人々や、反対的な意見を持っていた人達の
証言やコメントも結構入れたことで、ギリギリ成立していると思う。
一番感心したのは、ジョージの音楽的商才ですね。
コマーシャルな歌を作るだけじゃなく、どうプロデュースして売ればいいか、
どんなクリップが刺激的かつ効果的をすごく計算してる人ということがよーく分かる。
トイレでの猥褻行為事件のあとのビデオクリップなんて、
逆手にとってすごかったものね。


この映画で一番感動的だったシーンは、
生まれてはじめて運命的なものを感じ、つき合った「彼」のことを語るくだりだろう。
その蜜月の日々が生み出した作品やパフォーマンスの
なんとハッピーにパワフルなことか!
だが、運命はあまりにも残酷だった。
ジョージにかかってきた一本の電話が告げたのは、恋人のエイズの知らせ。
とき同じくしてフレディ・マーキュリーエイズによる訃報が知らされる。
彼の追悼コンサートに出演が決まるジョージ。
会場にはその「彼」もいた――映画内に収められた、
そのときのジョージの歌唱が、いまだに熱く、突き刺すように心に響いている。
ほどなく、その「彼」は亡くなった。
感情的になりすぎず、扇情的になり過ぎない編集も見事。


またちょっと邪道な見方かもしれないけど、英ゲイ・アイコン業界の仲間(笑)
エルトン・ジョンボーイ・ジョージ両巨頭の発言は聞き逃せませんね。
ジョージの公然猥褻事件について
「最低のカミングアウトじゃない?」(エルトン)
「笑ったわ」(ボーイ)とたたみかけるような編集が素晴らしい。
ジョージったらジョークの分かる方なんですね。
エルトン&ボーイはこれ以外にもかなり飛ばしてくれてます。
これ以上ないぐらいお金のあるゲイと
これ以上下がりようのないゲイの
はっちゃけぶりが見られるなんてそうそうありません。


エンディングにちょっとしたオマケあり。
ご覧なったら最後まで席を立たないほうがいいですよ。
公開はル・シネマ他でクリスマスごろを予定。