「放送禁止映像大全」

●「放送禁止映像大全」


放送禁止映像大全

放送禁止映像大全


「どんな危ないことが詰まってンだッ!?」
 などと興味本位で手に取った本でしたが、そんな不謹慎な本じゃありませんでした。
 ただ単に「危ない」ものを見世物として列挙するような本じゃなく、あの妖しい、どこかネガティブでダークな70年代放送カルチャーの、ある「一側面」を凝縮したような、そんな本です。


 私は1975年生まれ。物心ついた頃にはすでに80年代だったわけだけど、当時のテレビはやたらに再放送が多かった。「ウルトラマン」「ファイアーマン」「レインボーマン」をはじめとするヒーロー戦隊もの、土曜ワイドなんかの2時間ドラマの古いもの、そして「魔女っ子チックル」とか「ギャートルズ」をはじめとするアニメなんかが、もろ子供時代の思い出番組だもんなあ。後年それらの制作年代を知って驚いたほど。


 おぼろげな記憶で書くのも厚かましいですが、当時の番組って(思いっきり乱暴にまとめていうと)「悪」「負の概念」てなもんが思いっきり暗く、誇張されて、おどろおどろしく描かれていたように思う。
「マッド・サイエンティスト」「核・放射能」「狂気の殺人者」「恨みの復讐」「過去の怨念」そういったモチーフが濃縮されて「悪者キャラ」や「ヒール的登場人物」としてドラマに存在していた。またそれらを煽る演出が怖いんだこれが。(悲壮感タップリのオーバーな音楽、新劇風のくさい演技、あくまでもライティングは暗く、基本みんなハーフシャドウ。そして「これでもかッ!」てなぐらい悪人の過去は悲惨。これが基本ね)
 そんな、「負のイメージ」や「ネガティブな存在」の紹介が、この本の重要なエッセンスとなっている。やっと主題です。
 主に60年代後半から70年代にかけて作られたドラマ・映画・アニメの中からセレクトされるのは以下のようなもの。


●現在は放送が難しいもの
(差別的な内容ではないが、余りにも陰惨な内容だったり、身体障害者が主人公だったり)


●自主規制されているもの
(「キチガイ」「おし」などの禁止用語が多発されていたりする)


●直球で配慮がまったく無く、ものすごく差別的なもの
(全身がケロイド状態の怪人が「ひばくせい人」などとネーミングされていたり……)


 基本的にこれら3つのものが紹介されていく。
 ここから突然私見ですが、いやーどーして昔の作品って「発狂ネタ」が多いんでしょうね。ホントに意味なく人が狂いだす。ここで思い出すのが、小学生の頃の流行語だ。その名も「ハッキョ」。うわあ。
 意味もなく誰かをはやし立てるときに「やーいハッキョハッキョ!」とか言うんだが……そういうノリ、今の子供にもあるんでしょうか。ないかな。
 多分何かの番組で知ったんだと思う。それぐらい「普段」の言葉だった。しかしそれを、先生はもちろん咎めた。当たり前だ。それが、大事なんだと思う。誰にでも差別的な気持ちは発生する。だけど、「それを言ったら怒られる」「良くないことなんだ」とちいさいときに知るのが、体得するのが大事なんだと思う。
 そういう言葉を知らなければ、「理性」というものは獲得できないんだと思う。
 そんな観点から、この作者が主張する放送禁止作品がもつネガティブな表現を、ただ「禁止」して隠すだけでいいのか? という意見には全面的に賛成できる。正しい。
 とはいえ!


 うーんビックラこいちゃうぐらい「差別を助長するだろそりゃ」っちゅう話、結構あったんですね昔は。いやはや驚愕。おなじみ「必殺仕掛人」(1973)の第28話「地獄へ送れ狂った血」などタイトルからして危なすぎ。怖ッ。
 セリフには「親からもらった血の何かが狂っている」なんて表現も。精神障害が「遺伝するもの」という誤解がまかり通っていた時代の言葉だ。(今でははっきり遺伝によるものではないという結論が出ている)
 私は見たことないが有名キャラの「マグマ大使」(1966)などはもっとすごい。第21話「細菌を追え!!」では、地球人に変装した3人の「人間モドキ」が3人の浮浪者に変装、「隊列を組んでピョコピョコと移動」し、「首から『つんぼ』『おし』『めくら』と書かれたカードを下げている」のだそうだ。
 うーん……もうコメントのしようがありませんね。書いてて怖い。


 まあ、「不具」(この言い方も現在はNG)を作品に転じたものは日本の伝統芸能でも数多くあるんだけどね。
 狂言や日本舞踊なんかには「三人片輪」という演目があって(すごいタイトルだ…)、耳、目、口の不自由な人が踊るものもあるし、「座頭(ざとう)」といって(座頭市で知ってるよね)目の不自由な人の振りなんかいっくらでもあるもの。
 確かに、身体障害者を「笑いもの」にすることは許されるものではない。しかし、そういった演目を演じないことが差別をめぐる状況は変えるだろうか? そういった演目を封印して消滅させていいものだろうか? そういった表現を目にしなくなった現在、「差別」はなくなりつつあるのだろうか?
 そんな、コムズカシイ自答をフトしてしまうような本でもあった。


 ああ、堅苦しくなってんなー!
 うーんやっぱ「差別」に関わること書くのは難しいですね。誤解を生みたくないばっかりに今ひとつ飛べない、はい反省。今日は自分のためのお勉強ですね、失礼しました。
 最後にひとつ強烈なエピソードを。私は知らないのだけど「サンダーマスク」(1973年)というヒーローものがあったようで、その第19話になんと
「シンナー中毒者の脳ミソをチュウチュウとストローで吸う魔獣・シンナーマン」なるバケモノが出るのだそうです。もう書いてるだけ……(笑)。タイトルがもうズバリ「サンダーマスク発狂」。作り手がシンナーやりながら製作したんじゃないでしょうか。今放送したらいったいどういうことになるのか、ちょっと知りたいような。冗談です。


●速報


http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=323840

昨日「ブロークバック・マウンテン」という映画の試写に行ってきましたが
もうただただ素晴らしかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ミリオンダラー・ベイビー」よりも私は推す。(偉そうだな)
最後のクレジットが流れる中、ただただ余韻に浸って、ボーっとしていた。
「人生を歩むこと」をここまで端整に描いた作品が近年あっただろうか。
ラストシーンでは小津安二郎的世界観まで感じた。詳しくはまた書く。
3月4日シネマライズにて先行公開。必見!!


●お知らせ
ブログランキングに登録。
よかったらクリック↓お願いします。
http://blog.with2.net/link.php?198815