映画 『ボビー』

公開中

 うかうかしてたらとーっくに公開されて何日も経ってしまった。現在公開中の『ボビー』の感想をちょっと書き留めておきたい。
 ときは1968年、ロバート・F・ケネディ(JFKの弟ね)が暗殺されたとあるホテルが物語の舞台。支配人、コック、給仕、ホテル内のクラブの歌手や美容師、電話交換手など、様々なシチュエーションの人間がどんな「いま」を生きていたかが描かれる。劇中のセリフにも出てくるが、いわゆる「グランド・ホテル形式」のストーリーだ。
 これといった軸たるストーリーがあるわけじゃない。監督(出演もしているエミリオ・エステベス)の意図することろは知らないが、私はこのフィルムに焼き付けられた「1968年」という時代の空気を堪能した。誤解を招くかもしれないが、楽しんだ。
 黒人のシェフ、学歴のないオールド・ミス、白人のミリオネア、ドラッグに溺れるホワイト・ヒッピー、プエルトリコ系の青年、政治集会で活躍するインテリ青年……非常に巧みに人種、そして「クラス」の違う人間たちの「1968年のひととき」を活写して、紡いでいる。人種ゆえの待遇の違い、学のない白人女が頼るべきもの、まだ規制の緩いドラッグカルチャー、政治の季節に燃える若者、あぶれる若者。そのそれぞれに答えや意味合いをつけることなく、「こんな時代だった、こんな人々がいた」というスタンスに徹し、撮りきった。誰もが日常抱えている自分だけの「ドラマ」をつづれ織りにしながら、飽きさせずみせた力量は素晴らしいと思う。
日本でいうと昭和43年、調べてみたら3億円事件が起こり、「帰ってきたヨッパライ」がヒットし(♪オラ〜は死んじまっただ〜っていうアレね)、『座頭市』や『人生劇場』がヒットしていた時代のアメリカの一場面集。NHKが夜中たまにやる「懐かしのメロディ&映像特集」みたいなクリップがあるでしょう、『アカシアの雨に打たれて』とか掛かりながら当時の風俗や状景がひたすら流れる、というやつ。あれと大して変わらないようなノリなんだが、ミョーにこの作品が私は気にいっちゃったなあ。


●出演者に関する付記
ま、とあるホテルの一日を追った地味っちゃ地味な話なので、キャストがまあ豪華。アンソニー・ホプキンスデミ・ムーアシャロン・ストーンイライジャ・ウッドリンジー・ローハンヘレン・ハントクリスチャン・スレーターヘザー・グラハムローレンス・フィッシュバーンアシュトン・カッチャーマーティン・シーンハリー・ベラフォンテ……もう書ききれませんね! なんでもみんなエミリオの友人でほぼノーギャラとの噂。
 その中でも「新星!」ピッカピカに輝いていたのがメアリー・エリザベス・ウィンステッドというお嬢さん。いやーキレイだ、時分の花満開。日本でも人気の出る美貌だと思う。そして老けメイクなのか分かりませんが、シャロン・ストーン御大とデミ・ムーア先生のツーショットの恐ろしさたるや……シャロン扮するホテルの美容師がクラブの歌手・デミの髪をとかすシーンがあるんですが、冗談抜きでおしっこチビるかと思いました。歌舞伎の「四谷怪談」で「お岩さんの髪すき」なる恐怖シーンがあるのですが、それを遥かに凌駕する怖さ。必見!
 
左:「シワは男の年輪」といわんばかりの一枚です。 
右:この美しい顔が喋ると大変なことに……。


映画公式HP:http://www.bobby-movie.net/

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