サトエリに想う「ネオ・美どり」待望論

あの毒舌が懐かしい

 佐藤江梨子という人には今までまーったく興味はなかったが、「ブログで破局を告白」という一点だけにおいて、にわかに関心を持ってしまった。
 ひとこと、なんでそんなことをするのだろう? 


 自分の恋愛をネットに綴る女性(まあ男もいるんだろうけど)ってのは、さして珍しいもんじゃない。ただその大部分は「どこの誰それ」というのを隠してやってることだ。誰にも文句をはさまれることなく、ヒロイン願望に思いっきり酔えるスペースとしてブログを使う、ってのは分からなくもない。
 しかしこの人はマスコミを意識して吐露しているわけでしょう。でも、肉声を発することはない。なんていうか……中途半端な自意識というか、その自己顕示欲のありようが私には不思議なのだ。


 「芸能人」にとってライブのコメントってすごく大事な……「仕事の一部」だと思う。本業(歌とか芝居とか)がちゃんとあっても、私事で何かあればマスコミの矢面に立たされ、発言を求められる存在なのだ。また、この手の毀誉褒貶にもまれることが、自らのステイタスを育て上げていくことでもあると私は思う。そういう覚悟が必要なのは仕事上のリスクでもあるが、それだからこそのハイリターンもあるのだしね。
 別離のサンプルでいうと「いしだあゆみ嗚咽離婚会見」(ショーケンとの別離)と「泉ピン子号泣会見」(ダンナ浮気発覚)などがいい例。ふたりとも立派な女優だが、「会見」という舞台において芸能人としての「職務」をまさに全うしていたと思う。ただ二人とも「泣き鼻水」まで披露した女優捨て身の会見だったにもかかわらず、前者は「なんて潔い!」後者は「なんて汚い!」という正反対の感想になってしまったようだったが……ホントに失礼。閑話休題


 そういう点でサトエリはどうするのか。これから何かあるたびにズーッとあんな散文的な「おことば」だけで、芸能界のノブリス・オブリージュを乗り切ろうっていうのか。じゃあ逆に俺はサトエリに出てきて喋ってほしいのか。いいえまったく。あっははは何が言いたいんだ俺は。
 ま、簡単にいうと「変わった自己顕示欲だなあ」ということなんですがね。聞いてほしいなら出てきて喋ればいいのに。「芸能人」というものは自分の恋愛はもとより、子供の一挙一動から暮らしスタイルまで「どんどん自分から見せちゃいたい」という特殊な人たち、であるべきじゃないのか。そのぐらいの過剰な自意識があってしかるべきじゃないか。いいことも悪いことももっとヒロイックに酔ってとうとうと語るぐらいの(誤解を怖れず書くが)「勘違いっぷり」あってこそ「タレント芸能人」っていうものでしょう、うーん……半端だ、実に半端だ! そう、それがいいたかったのですね。
 「ネットで私生活発表」という芸能人はこれからどんどん増えていくんだろうなあ。うーん……「正負併せ呑む」ような大物はもう出てこないのだろうか。 ああ、「作家転進決意」という訳の分かんない理由だけで会見を開いちゃった「海老名美どり」が懐かしい! 
 もっと芸能界に、キチガイが観たいよ。


〇注:「海老名美どり騒動」
林家三平の娘にして峰竜太の妻、海老名美どり(以前はタレントとして活動、春風亭小朝の妻・泰葉の姉)はかつて「緊急記者会見を開きます」とマスコミに発表、峰の浮気騒動なども以前から噂されていただけに「すわ離婚か」との憶測を呼んだが、結局集まったマスコミに「作家に転進します!」という意志を発表しただけの会見に終わり、「なんじゃそりゃ」と全マスコミをズッコケさせた経歴あり。三平の娘、というステイタスによる歯に衣着せぬ発言、舌鋒は相当なもので、かつてマルシアを番組内で「こーいうタイプの人嫌いなのよ」と言い捨てては号泣させスタジオを凍りつかせた経験も持つ。林寛子と共に80年代後半を代表するやりたい放題女性タレントであった。