ゴーストライターの呟き

この中にいたりして

 「俺さァ、芸人Zのネタずっと作ってきたんだよォ。けどよ、あんまりギャラ安いから辞めたわけ、こないだ。だからアイツ最近つまらねーんだぜ」
 ベロンベロンなその口調、明らかに酔っ払っているその方は、見ず知らずの私にそんなカミングアウトをなさいました。某酒場にて隣に座っていたそのお方、勢いで何となく話しかけて来たんですけどね、こんな突然の告白……いやはやビックリ。いやー、なんだか裏社会だなあ、芸能界ってやっぱり汚いんですね! 

 なーんちゃって。まあ本当かどうか全―然わかりゃしないのだけれど。それにタレントさんに作家がついてるなんて当たり前のことだしねえ。しかし私は、その人のほとばしる憤懣の大きさ、そんなものだけが印象に残った。会ったばかりの私にまで吐き出しちゃうぐらいヤだったのだろうか。それとも単なるこの人の虚言癖、大言壮語ってだけなんだろうか。
 まあ、よーく昔からあるネタですね、ゴーストライターの悲劇。「先生、この作品きりって言ったじゃないですか、これでもう解放してくれるって!」「ひどい……先生これは僕が見てくださいって渡した原稿じゃないですか、なんで先生の名前で掲載をッ!?」もう古今東西マンガでもドラマでも幾度となく使われてるネタですが、うーん……本当によく現実でもあることなんだろうなあ。まあ、かくいう私もゴースト仕事したことありますけどね(笑)。
 この手の話で一番素晴らしいネタは、やっぱり松本伊代さんをおいてないでしょうね。自身のエッセイ本を出したときの記者会見でかつて彼女は、
「伊代さん、この本の一番の読みどころは?」
「うーん、まだ読んでないんでわかりませーん!」

 というもの。素晴らしい……ここまでやってくれればゴーストさんも浮かばれようというもの。まあ、ゴーストでも何でも仕事があるだけ幸せじゃあないか。それに、面白いネタ書いてたたんなら、見てる人は必ずいるでしょう……などとありがちなセリフは要らないんだろうなあ、と思わせるほどに、いい酔いっぷりの彼だった。間欠泉みたいだった。明日になればまた、彼もペンを取るんだろうなあ。彼に「食えよ」と言われて、こっちのテーブルに貰ったザンギをひとつ食べて、私は帰った。


○追記
 と、ここでフッと思い出すのが天知茂×明智小五郎、土曜ワイド劇場不朽の名作「美女シリーズ」における「エマニエルの美女」ですね。ゲストに夏樹陽子江木俊夫、中条きよし、岡田英次と豪華キャストを揃え、仕上がり的にもシリーズ屈指の出来を誇る一本なんですが、この回でもゴーストライターが重要な伏線となって出てきます。昭和50年代らしいエログロたっぷり、こんなもんをよく夜の9時台に放送してたなあ、と唖然とすること必至の濡れ場、そして倒錯的シーンの連続。最盛期の夏樹陽子の美しさが、それはそれは素晴らしい一本。

エマニエルの美女 江戸川乱歩の「化人幻戯」 [DVD]

エマニエルの美女 江戸川乱歩の「化人幻戯」 [DVD]


○追記2
 と、ここでまたいきなり話は変わる。最近夏樹陽子が大変なことになっているのをご存知でしょうか。あはは、本当に取りとめもない流れだなあ。
 私はコンタクトをつけずテレビを流しっぱなしにしていたんだが、「おもいっきりテレビ」でコメンテーターとして登場していた彼女、カッツリと作りあげた前髪と、馬の尻尾のごとき長いポニーテールをすべて金髪に染め上げていた。というよりも完全脱色。私は一瞬、「あれ? 家田荘子さんって最近はロングにしたのか!?」と真剣に思っちゃったほど。 今でも充分綺麗で、スタイルも素晴らしいのに、どーして「ドンドン手を加えたい」と思っちゃうもんなんでしょうね、ある種の「美人」ってものは。何かセルフイメージにアクセントをつけ続けなければ、と思う人気稼業ゆえの「習性」みたいなものを感じて、ちょっと私は痛々しかった。


●お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuo-a@hotmail.co.jp