白央的放浪記 1

チラシ・エバーラスティング

 「あのですね……」


 電話越しで、渋谷アパマン某のAさんが、内臓を全部「捻転」したんじゃないか、ってなぐらい心苦しそうな声を出している……。
 先日の引っ越しプロブレムに関しては以前書いたとおりだが、(このことについてはちょっと前の日記、「ニュース常套句の恐怖」を読んでください。http://d.hatena.ne.jp/hakuouatsushi/20070923
 ようやくギリギリ滑り込みで決まって安堵していたというのに。あのとき「よかったよかった」と手を取り合って喜んだばかりじゃないか。
 また「やっぱりフリーランスなんてブー」「もっといい応募があって」とかなんとか言われて断られるのか!?……一瞬にして心が不安に染まる。
「一体何がどうしたってんですか……」
「それが……」


「僕も頑張ったんです」
 なんと……不吉な言葉であろうか。頑張ったけれども、どうしようもなかったという事実がこれから話されるのが決定。ああもう早く話してくれ、いや聞きたくない! ああああ一体私の新居に何が。
「ハウスクリーニングが……5日じゃないと、終わらないそうなんです」
「と……いうと?」
「ですから……入居可能日が…6日っていう感じでしょうか……」
「えええーーーーーーーっだって『即入居可』って書いてあったじゃないですか」
「それはもちろんそうです。でも実際は違ったんですねー」
「そんな人ごとみたいに!(人ごとだ)」






 この文章だとAさんはいい加減な人みたいだが、実際はものすごく有能で、無駄のないひとだ。この人が「ダメだ」といったら抗いようがないのは、もう分かっている。立場上、丁寧に応対してくれているが、「もうこの状況を受け入れるしかないんです」ということが言外に語られている。
「私もこの業界入り立てじゃありません。あらゆる言い方で早めてもらうよう交渉しました」
「おおお、それで?」
「それなら、この物件はご遠慮下さいと態度を硬化させたので、私も引かざるを得ませんでした」


  この不景気になんという……ああ……「お客様は神様です」なんて嘘八百だったのですね……カネ払う側が絶対正しいと思って生きてきたのに、現実社会はどこまで玄妙なんでしょう……。
「つまり…どうすればいいんでしょう、入れないって事は!?」
「白央さん……今一度聞きますが、どーーーしても今のところは延長できないんですよね」
「ええ、月末夜半には新しい方がもう荷物を入れるそうです。私は夕方出るって話し合いまで済んでますからね」
「…………」Aさん沈黙。
「…………」わたし沈黙。
「わかりました、これは当社にも責任があります。私が責任を持って」



 おおおおお、さすが私が有能と見込んだ男だ! あと2日ぐらいでスーパースペシャルな物件でも格安で紹介してくれるのだろうか!??
「当社でトランクルームのお代は持ちましょう! 引っ越し代も便宜します!」
 かくして、私の6日間におよぶ放浪記は幕を開けた……。


<つづく>



○付記
 まだネット環境が整備されてなくて更新マメにできませんが、取り合えずちょっと時間が出来たので更新しました。長く休んでものぞきに来てくださってる皆さん、どうもありがとう。ていうか…このブログはお世話になってる編集さんもよーく見てくださってるんですね。ですから、原稿が上がっていない場ヒジョーに更新しにくいわけです。笑 まあ、またこれからチコチコ付けていきますのでどうぞよろしく。沢尻ネタ、早く書かなきゃ。なんのために。