アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生

この数時間後、レノンは死んだ

○「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
公式ホームページ http://annie.gyao.jp/ 公開は来年2月予定。


 雑誌「ローリング・ストーン」や「ヴァニティ・フェア」をで世界的な名声を築いたフォトグラファー、アニー・リーボヴィッツ。裸のジョン・レノンオノ・ヨーコに寄り添っている写真や、妊娠中のデミ・ムーアのヌード・フォトなど、全世界的にある種の「ショック」を与えた作品を数多く残している人だ。1949年生まれというから、今年58歳か。
 私は「写真」というものは、どれだけその一枚から撮り手の気持ちが伝わってくるか、感じられるか、その一点にしか興味がない。「きれいだなあ」「許せない」「神よ!」そのベクトルは無限だが、プリミティブでストレートな感動を伝えたり、問題提起から文明論、世の無常までを、たった一枚で表現可能なツールでありえる凄さがある。そしてさらには、その人の品性まで伝えてしまう怖い、恐ろしいものだと思う。
 押し付けがましい写真、というのが一番苦手だ。きれいだろう、カッコいいだろう、オシャレだろう……ほら、こんなに世の中って腐ってますよ、問題ですねえ、僕はそれを提起したいんです……こうるさい写真、というのが世の中にはごまんとある。その対極にいるのが、彼女だ。

 この人の作品群のひとつに、「オズの魔法使い」や「不思議の国のアリス」をモチーフにしたものがあるのだけれど、これらの凄さは「本当にその絵が見えちゃってる」ところだ。多分、彼女の目には実際のオズの国とワンダーランドが見えてるんだろうと思う。わざとらしさ、素敵に見せよう、オシャレに見せようという狙い・衒(てら)いがまったくない。ここまでデコラティブなことをしてワザとらしさを感じさせない、これが素晴らしいんだなあ。
 そしてなおかつこの人の優秀さは、そこにコマーシャリズムというものまで介在させてしまうことだ。映画の中で存分に語っているが、雑誌における「表紙」の意味合いをキチンと汲み取って、クライアントの要求に応えた作品づくりをしている。なんという「知」!
 雑誌好き、写真好き、映画好きなら観て絶対に損はないと思う。モデルとなる「the famous」(有名人、とかセレブリティ、という言葉ではくくれない気がしたので、この表現にしました)が、アニーのテンションに引きずられてセッションにのってくる姿は楽しく、見ているほうも興奮してしまう。自身のイメージの世界に彼らをアダプトさせるべく、様々な要求を容赦なくアニーはし続ける。それが「とっても過酷!」と被写体たちが語るくだりが最後にあるのだけれど、根をあげたアーノルド・シュワルッツェネッガーにアニーが言ったセリフが「つらいのは一瞬だけれど、この写真は永遠なのよ!」(the shock is temporary, this shot is eternity !」)。うーん、カッコいいなあ!


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