『美の巨人たち』より 〜ノーマン・ロックウェル

ノーマンの自画像

 知らなかった。驚いた。うーん……気をつけなきゃなあ、勝手な「レッテル貼り」って、しちゃってるもんですねえ。


 ノーマン・ロックウェルというと、1950年代を中心としたアメリカのもろ“Good old days”を描いた画家・イラストレーターという認識しかなかった。
 「ミスター・ドーナッツ」のパッケージに使われてそうなイメージ(使われてたっけ? ペーター佐藤のは覚えてるんですが……)。
 無条件に幸せそうな善男善女の世界。マーク・トウェインの世界そのままの少年少女、サンタクロースみたいなおじいちゃんに、おばあちゃんはロッキン・チェアで縫い物をしながら居眠り……そんな、この世の最も幸せな部分だけを描いた作家だと思っていたら。




 テレビ東京系の『美の巨人たち』(16日放送)で紹介された一枚の絵。


『新しいご近所さん』という邦訳が一般的なよう(原題は“New Kids in the Neighborhood”)。





 みなぎる緊張感。
このわずか一秒後にも、心無いことばが投げかけられそうな、危うい雰囲気。この画像では見えないけれど、左一番奥の小さな窓からは、「黒人が引っ越してきたんだって……?」と、カーテン越しに様子を伺う人が描かれている。


 さらにもう一枚、アメリカではつとに有名、という絵が紹介されていた。
 バックの壁にはぶつけられたトマト、そして「Nigger」(黒人の差別語)の落書き。連邦保安官に守られながら歩く、黒人少女の姿。
 アメリカが、人種差別を当然のものとして「豊か」であれた最後の時代、フィフティーズ。その次のジェネレーション―――公民権運動と、白人たちの激しい拒絶に血が流れた60年代もノーマンはきちんと描いていたのだ。うーん……不勉強でした。
 ちなみに、その絵のタイトルは“The Problem We All Live With”。私たちすべての問題、と訳したらいいのだろうか。










※番組では絵のバックボーンまでは詳述されていなかった。気になって調べてみたので、ここにメモしておきたい。


 モデルの少女は、ルビィ・ブリッジス。ときは1960年、人種差別が最も激しい南部・ルイジアナ州ニューオーリンズ。最初に白人専用だった学校に通った黒人のひとり。選抜試験で抜群の結果をおさめた少女だった。
初登校の日、白人たちはデモを行い、シュプレヒコールの嵐。
「帰れ!」
「お前の来るところじゃない!」
 ルビィはそのとき、6歳だった。白人の親たちは子供たちを登校させなかった。ガランとした学校に、ルビィはひとり。先生までルビィを拒否した。北部・ボストンから来た先生だけがルビィを教えた。二人っきりの授業がはじまる。デモは1学期間続いた。ルビィの父は解雇された。1年以上も、二人だけの授業は続いた……。



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