老優二人の「芸」に唸る!

二人で157歳

現在放映されている携帯電話TUKAの
CMに惚れ惚れしてしまう。
今年82歳の小林桂樹と75歳の藤岡琢也が共演するアレだ。
年をまったく感じさせない見事な掛け合い。
俳優として、喜劇人として、築き上げてきたテクニックと
経験に裏打ちされた役者としての「大きさ」が
小さなCMの世界に溢れている。


やりとりしている内容やセリフは
「難しいだろ」「簡単だよ」ぐらいのもんで
実に単純極まりないが、その「イキ」、「間」の良さが
もう見事で素晴らしくて。ため息出ちゃいますね。
電話を使う小林桂樹を見るまでは
半信半疑だった藤岡琢也
「ほんとうだぁ」みたいな表情を絶妙の間でするとこなぞ、
それだけで「芸」ですね。うーん凄い!
巧まざる上手さ。さりげなく滲む旨み。
お金払ってないのにこんなもの見れて
嬉しくなっちゃう。


森繁久彌でおなじみ「社長シリーズ」で
叩き上げた二人だもんなあ。上手くて当たり前なんだが。
調べてみたら二人の同シリーズでの初共演は1969年、
「社長えんま帖」のようだ。いつも藤岡琢也
ポール花岡だのいう名前で2世の取引先を演じて
森繁や小林桂樹のいる会社をかき乱すのが
たまらなく可笑しい。ベタなのよ。
予定調和な笑いなんだけど
シンプルな筋を各々の個性と芸で
立派な「みもの」に仕立て上げてしまう。
彼らの芸を存分に発揮させるために、
わざとシンプルなストーリーに
していたのじゃないだろうか。


フレッド・アステア
自分のダンスナンバーを撮影するときは必ず
「身長のサイズにきっちり天地で、正面から狙え」と
指示したのと似ている気がする。
カメラワークや特殊技術に頼らず
自らの「芸」だけで観客を満足させる自信。自負。
「余計なもんなくたってきっちり見せたるわい!」という
エンターテイナーとしてのプライドをアステアや
この両優からは感じる。


しかし…一方で
現在リアルで流れているものの中に、
こんな感慨を持たせてくれるものが
いかに少ないかということにも気付き、
ちょっと悲しい気分にもなるのは事実なんだけどね。