「シュヒギム」って書けるかおめえ

こんなブログに書くのも皮肉だが
一億総エッセイストな平成の御世、
にわかには信じられないような話を聞いた。


とある週刊誌の製版(印刷するさいの原本を作ることね)
をやっている会社の新入社員が
自分のブログを作ったのだが、
その内容というのが仰天だ。


彼は某週刊漫画誌を担当していたんだが、
その入稿(原稿を製版所・印刷所に入れること)や
出稿(出版される状態の刷りが出ること)、
校了(原稿校正がすべて終了すること)の
進行状況を逐一アップしていたんだそうな。
いや、実際読んでみたから
していた、というべきか。


ご丁寧にも携帯で撮ったと思われる
写真付き。某大物漫画家の生原稿などがアップされていて、
好きな人はさぞかし喜んだことだろう。


「今回も『○○』がラストで入稿。
今日も徹夜かなあ。最終的に木曜日までは
校了伸ばせるから急がなくてもいいのになあ」
なんてコメントまでついて。


この最終的な「引き伸ばし」のタイミングって
編集者にしたら、対作家的に
最もシークレットにしたいことなんじゃないだろうか。
だって締め切り急がせても
「木曜まで大丈夫なんだろ」って言われちゃうもんね。


(大丈夫、ってのは「なんとか本が出る」ギリギリで
大丈夫ってことで、そのためには
徹夜する人が幾人も出たり、
延長料金を印刷所に取られたりなど、
ちっとも大丈夫じゃあないのだ)


さらに情けないことにはそのブログを発見したのが
製版所の人でも出版社の人でもなく、
その雑誌に描いている作家(超大物)だった
というから笑うに笑えない。トホホ。


ブログは緊急停止となり(あたりまえだ)
重役クラスが詫び入れて事なきを得たらしいが、
それにしてもお粗末。あまりにも幼稚。
本人にしたら「僕の頑張り日記なのに、
なんで怒られなきゃいけないのー!」
といったところなんだろう。
「児戯につき合わされる」という表現がまさしくぴったり。
ネットというものの可能性と波及力に
まったくもって鈍感な感性が見てとれるようだ。


うーん厭だなあ。
こういう事件そのうち増えてくるんだろうなあ。
「シャレなんないから」って常識的感覚が、
急速に変質してると感じる
二日酔いの葉月半ば。頭に響くは蝉の声。