インタビュー ウィズ WAHAHA本舗

ライトいつもより飛ばしております

人生には様々な「よろこび」が溢れているが、
その中でも一際感動的なのは
「氷解するよろこび」じゃないだろうか。


今までモヤモヤしていた感情や、
答えの見えなかった疑問や懸念が
一気に晴れわたり、解決する。
それは、脳にたっぷり酸素が行き渡ったような、
スッキリしたような気分。
それは、一気に視界が広くなったような、独特の感覚。


そんなよろこびを最近もたらしてくれたのが
WAHAHA本舗の主宰で演出家、
喰 始(たべ はじめ)さんだ。
インタビューの記事でお会いしたのだが……
うーん、私はインタビュアーとして失格ですね、
彼の話を聞くうちにのめり込んで
話し込んでしまった、面白すぎて!
いやもうおっしゃること全部が
「ああそうそう、そういうこといいたかったんだ!」
というような演劇に関する氷解の連続。


もう取材テーマそっちのけで、
とにかく彼の内にあるキラキラした考え、姿勢、経験を
貪りたくなってしまったのだ。
ひとつでも多く聞き出したい欲求に駆られちゃいました。


話はベーシックに演技論、演出論、劇団論に
終始するんだけど、それが見事に時代とリンクしている。
時代を照らし出している。現在作り出す演劇、
入ってくる人間、彼らを演出していて思うこと、
客の反応…様々なファクターを通して思い、考えたことが
ひとつの見事な現代演劇論となり、またそれは同時に
現代社会学論ともいえるものとなっているのだなあ、
いやおみそれしました。


「お山の大将」というものは
みなそれなりに独自の哲学を持たなければ
なれないものだと思うが、往々にして時間が過ぎるほどに
アナクロニズムな様相を呈していく傾向がある。


大抵が一家を成したときが
その芸術性やカリスマのピークで、
あとは「ピークだった自分」の模倣と化していく
パターンが多いのだが、
彼は全く違う人だった。
なんていうか…改訂を重ねる辞書のような人。
そう、厚い男。博覧強記という意味じゃないよ。


私はインタビュー中、基本的に
分からないところはドンドン止めて
訊いてしまうタイプなんだが、
喰さんのスゴイところは、私がよくわかんなかった表現を
すぐに違う言葉や言い回しに変えて説明するところだ。
なっかなかできませんよ、こういうこと。


(グチっぽくなるが、結構自分の使ってる表現や
言葉に責任のない人って多いもの。いやしくも
「言葉」を商売にしている人間と話してて
こっちが「それはどういう意味ですか」とつっ込むと
「まあそういう感覚、センスですよね」
なんてお茶を濁す編集やライター多いのよ。俺か)


話の説得力がすごくて、まさに「3D」なんだよなあ!
彼の言葉が耳に入ってくると、
その意味や状態が絵で浮かんでくるんだよね。
身振り手振りで演劇や役者のエピソードを
語ってくれるんだが、それがもうひとつのパフォーマンスに
なっている。それはともすると歌舞伎の仕方話にも似て。
勝新芸談にも似て。


「欽ちゃんの仮想大賞」や「ゲバゲバ60分」などの
TV界が最初に活性化したころの
放送作家として活躍された人で、
ものすごいダメ出しとネタ出しを
当時のディレクターから受けたことが
今の自分のベースになっているという。


それは知識や経験ということではなくて、
今も自分と周囲に納得するまで
ダメ出しをする習慣がついていると
いうことなのだそうだ。


「自分にずっとダメだしをすること」
はい、心に沁みました。


「スケールの大きな詐欺師にならなきゃね、
スタッフを含めた劇団全員が」


この言葉が〆でしたが、いや、もう惚れましたね(笑)。


若いうちにしっかり働いておかないといけないな、と
思った仕事帰り、夜の1時30分。


●写真
かたっ苦しい話になったので
ここらで花を添えていただきましょう。
梅ちゃんです。ほら5列目までは
ピーナツ飛ぶよどいたどいた。