古本をめぐる悦び

ビュッフェの文字、グッドデザイン!

「出会いですものね」
早稲田通りにある古本屋の店主に言われた言葉。
品のいい老婦人だった。
随分と長いこと買おうかどうしようか悩んで
開いては閉じ、出しては戻した本を、
意を決してレジに持っていったとき、
ちょっと私の目を見て、微笑んでそう言われた。
思わぬ「おつり」が嬉しかった。


うーん古本屋を巡る喜びって、まさにそれだよなあ。
思いもかけぬ「めぐり逢い」がほんのたまに訪れる、
そんなはかない期待がどこかにある。
黄ばんだ背表紙のつらなりに、ごくたまに吸い寄せられるような一冊がある。
無造作に積まれた古雑誌の山の中に、妙に気になる一角がある。
宝探しにも似た、独特の快感。


音楽好きの人はよく「ジャケ買い」をするようだが、
本好きは「装丁買い」してしまうなー。
聞いたこともない作品や画集でも、パッと見で
「絶対これ好き!」と思えるあのひらめき。
それは恋愛の一目惚れにも似たエキサイティングなリビドー。
結果は、まあ……7割がたはハズレないと思う(笑)。
たまに「なんじゃこりゃあ」と松田優作しちゃうこともありますが。
まあそこは古本、金額もご愛嬌。
恋愛運はさっぱりですが、古本運はハクオー結構あるようです。


なんか今日好々爺みたいな文章。
秋晴れで洗濯モン片付いて空気も良くて
気持ちいいからでしょうか。
なんか…名画『東京物語』の笠&東山夫妻が熱海の海に
たたずんでいるかのような気分です。
今日もあつうなるで。
枯れてきました(笑)。


●付記
その日の成果。
「TOXIQUE」(求龍堂)というところから出ていた
サガンの麻薬療養所日記とベルナール・ビュッフェの画文集。
全部の見開きにビュッフェのイラストが入るゼイタクさ。
好きなんだよなあビュッフェ。
全くまるみや柔和なところのないタッチだが
なぜにかくも優しいのか。イラストのトリミング、
文のレイアウトともに素晴らしい出来ばえ。
なんかこんな可愛いモン手に入れたってだけで嬉しいなあ。イヒヒ。


ああ…昭和46年に出たオールカラーの「横尾忠則全集」なんてのも
見つけちゃいましたが\16,000也…。悔しいけど買えないや。
場所は高田馬場と早稲田の間、「五十嵐書店」という素敵な内装の古本屋です。
現代アート関係強いですよ。オススメです。
www.oldbook.jp