『17 アゲイン』&『60歳のラブレター』

これサングラスバージョンも有



 『17 アゲイン』(セブンティーン・アゲイン、原題も『17 again』)


 『ハイスクール・ミュージカル』のザック・エフロン主演作。これがね、いーーーーーーんですよ。久々に、シンプルに笑える一作。その笑いに、ほどよい「品」が漂っている。その「品」が、絵空事になっていない点が、さらにいい。




○心=37歳、見かけ=17歳


 88年の映画『ビッグ』では、朝起きたら主人公の少年が大人(トム・ハンクス)になっていた。本作では、その逆。37歳の中年が、一夜にして17歳に。時は原題のまま、体だけが高校時代の自分(ザック・エフロン)に戻っているという設定。今ではうだつの上がらないサラリーマンの彼が、バスケ部のスターだった頃の自分に。
 ザック・エフロンが演じるのは、「心は37歳、見かけが17歳」という「少年」なわけ。


 この設定が、ドンドンきいてくる。自分の子供の高校に転入しちゃうんだけど(このへんは超・ご都合主義でガンガン押し進めてくる。そのテンポもいいんだな)、娘と同じクラスになるんですね。


 心は37歳のパパから見たら、脳味噌クリームシチューみたいなドアホウに娘はぞっこん。さらに弟はクラスの皆とうまくやってると思いきや、トイレに閉じ込められて「スマキ」にされてたり。
 でもね、ここで話が暗いトーンにはならない。弟は「そんなもんさ、俺、パッとしないし」と淡々と受け流している。高校生活なんて早く終わってしまえばいいと思っている。娘は折角いい大学に受かりそうなのに、アホウと同棲をはじめようとしている。
 見かけはイケメン17歳のパパ、「こんなんじゃいかん」と立ち上がる!



○キテレツロマンス


 ハリウッドには昔から、「キテレツ設定コメディ・ロマンス」というジャンルがある。私が勝手にそう呼んでるだけなんですけどね。先の『ビッグ』しかり、ダリル・ハンナが突然人魚で現れる『スプラッシュ』、マネキンが実際の人間になってアンドリュー・マッカーシーと恋に落ちる『マネキン』、そしてマイケル・J・フォックスが狼男の高校生を演じた『ティーン・ウルフ』などなど。
 本作は、その系譜に連なる作品じゃないだろうか。ザック・エフロン演じる「大人こども」のマイク、これが実にいい味で。
 自分の娘の貞操を必死になって守ろうとするマイク。高校生活に何の希望も見い出せてない息子に、何とか楽しい10代後半の思い出を作ってあげたいと奔走するマイク。それが、誰よりも青春を謳歌できそうなルックスとキャラクターを持ったザック・エフロンであるという妙味。
 


 設定の面白さに、俳優としての資質も加わる。うん、ビックリした。動きにとてもキレがあって、セリフにもキレがある。バスケットボールをさばきつつ、いじめっ子をビシッとやり込めるシーンには感嘆した。あんな演技できる日本の若手、いるだろうか。



○女にモミクチャにされる面白さ

 またこれは望んでも得がたい素質なんだけれど、この俳優は、女にいじられてサマになる人だ。女にからまれておかしみのうまれる人――こういう男優は、希少だ(ちょっとこれについては後で詳述)。


 彼はまず娘に惚れられてしまう。「必死になって私を構ってくれて……大好き!」クラスメートにも迫られる。「カッコいいのに、すぐヤラないなんてクール!」しかしマイクは、実生活で捨てられそうになっている奥さんのことで頭がいっぱい! 娘の母(つまりマイクの奥さん)に会えば「あなた……亭主の若い頃にソックリねえ……」とマイクを不審に思いつつ惹かれていき、娘は「どーして若い私に振り向かいの!?」とさらに不審に思われ……女たちにモミクチャにされるザックがたまらなく、おかしい。結末をぜひその目で確かめていただきたい。


 ラストは不覚にも、ジーンとしてしまった。笑って、泣かせるクラシックなコメディ。うん、最初に述べた「ほどよい品の良さ」というのは、ソフィスティケーションのある笑い、ということにつきると思う。




○付記


 主演中村雅俊子息の事件で、変な騒がれ方をしてしまった不運な作品。うーーーん……お話にはノレなかったが、出演者ひとりのことを書きとめておきたいのです。
 同じく明日公開の『60歳のラブレター』という作品に佐藤慶さんが1シーンだが出ていらっしゃる。これが、嬉しかった。最近あまりお姿を見なかったので(私はあまりテレビを追っかけないので、ひょっとしたら全然出てらしたのかもしれないが)、勝手に心配していた。
 朝の連続テレビ小説チョッちゃん』の無骨だが愛情深い父親、映画『天城越え』、様々な役の深い演技に唸らされた。って、なくなったみたいな文章書いてますね。失礼しました。
 この映画では、見かけは確かに老けられたが、声よし演技よしの存在感は変わらずでした。いつまでお元気でいてほしい。




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