大器の予感、大後寿々花。
この名前、覚えておいて損はない。
これから立て続けに彼女の出演作が公開されるんですね。崔洋一監督の新作『カムイ外伝』、そして西原理恵子原作の『女の子ものがたり』の2作。
前者では主人公カムイ(松山ケンイチ)と恋仲になる娘、そして後者では準主演、これまた素朴な田舎の、一昔前の少女を演じる(なんたってサイバラの娘時代、という役なのだ。これで分かる人は分かりますね)。
いやはやこれが……いーんですよ。日を追うごとに、両作品を思い出すたびまず目に浮かぶのが、彼女の表情、そして芝居。
彼女、はっきりいって美人型じゃあないんです。
「いまどき」という言葉が私は嫌いだけれど、最近雑誌にテレビに多く露出してる「かわいこちゃん」(キレイ目の有象無象と言い換えてもいい)たちの平均的な容姿とは、かけ離れている。
顔立ちは地味で小作り。手足も顔の大きさも、はっきりいってまぁ……「一般人」のそれと大差ないのではないか。
それなのに。
スクリーンに映る彼女……えっらい魅力的なんだなこれが。
たまらない不安に襲われて泣きそうな顔をしたり、耐え難い哀しみに絶叫したり、怒りに心が爆発する大後寿々花は……ああ、イージーな表現だけれど、とっても映画的。とってもドラマティック。なんという存在感だろう。
躍動感があるんですね、芝居に。それはただ動いて喋ってどうこう、っていうものだけじゃなく、黙っているだけで瞳に力がある、というか。
この人は魅力は、「陰」(いん)にある。
私は彼女の芝居を観ていて、山口百恵や昔の桃井かおり、そして20代の頃の永島暎子、といった面々を思い出した。
暗いエロス、影のあるエロティシズム、華やかではないけれど、その内には人一倍の熱情がたぎって、深いエモーションがうずめいているような……。
忍者の時代の村娘、そして30年前の日本を舞台にした物語で、いい役をつかめたという強運も持つ彼女。その容姿と持ち味が、その時代に合致してたしね。
優れた個性の持ち主は、「いまどき」的な公約数の魅力を無にする力を持っている。でも、彼女はテレビに合うタイプのひとじゃない。プロフィールを見たら、『SAYURI』の子役で注目されたとのこと。
あ、あの子か!
うーん……やっぱり彼女は前時代的な役柄がピッタリハマる。『おしん』のような話で朝の連ドラを製作したらヒットすると思うけどなあ。
これから現代もので、この特質をうまく料理する監督に出会えるといいのだけれど。
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