「分かっちゃいるけどやめられない」〜クヒオ大佐のこと

クヒオ役は堺雅人



 昨日映画の感想でちょっと書きましたが、「クヒオ大佐」のことを書きとめておきたい。10月に堺雅人松雪泰子主演で公開される映画なんだが、なによりもモデルになっている「その人」自体が、圧倒的にユニークなのだ。


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「プリンス・ジョナ・クヒオ・ジュニア大佐=本名・鈴木和弘」

 
「彼」のことは、世間的にどれぐらい知られているのだろう。
 一部の好事家に語り継がれてきた伝説の結婚詐欺師、クヒオ大佐――実在の人物。
「父親はカメハメハ大王の末裔、母親はエリザベス女王の妹の夫のいとこ、そして私は米軍特殊部隊のジェットパイロット」
 いけしゃあしゃあと、ねえ。なんだか「ガマの油売りの口上」みたいでもあり、「新宿・花園神社の見世物小屋の呼び込み」みたいでもある。
 さらにはこんなスットンキョウな自己紹介、今風にいうなら「プロフ」で、騙されちゃった女の人が何人もいたってんだから……凄すぎる。
 このかた、随分古い人なんですよ。私は中野翠さんのコラムで知った。調べてみたら1984年、写真週刊誌『フォーカス』が彼の逮捕を報じている。これが世間に顔が出た最初だろう。
 今からもう25年前のことだ。


1:クヒオのワードローブ、そしてフェイスタイプ

 そのフォーカスの写真がアンフォゲッタブル、彼の「いでたち」がいまだ脳裏に焼きついている。

1:服→そのまんま「タケちゃんマン」みたいな格好。元は沢田研二TOKIO』か。

<参考資料>


これで下がハイウェストの白っぽいタイトシルエットのパンツだった。ほんとなんだってば。


2:マスコット→肩にオウムみたいなものを乗せていたと思う。「カメハメハ」部分の出自を強調するアクセサリーだろうか。


3:そしてお顔立ち→(ジャイアント馬場東国原英夫)÷2=クヒオ。これは相当いい線いってると思う。三人並べた写真をアップできないのが本当に残念。

<参考資料>
÷2=クヒオ



2:煩悩の男と女・ふしぎなのどかさ


 荒唐無稽なストーリーをこしらえては女の前で滔々と語り、仮想現実に生きる男。 
 それを聞いてあげる女たち。そしていつしかお財布を開く女たち。
 なんていうか、ものすごく愚かしいんだけど、両者とも人間くさいなあ。そう思わずにおれない。「分かっちゃいるけどやめられない」ってな感じの究極だと思う。
 この植木等の名曲のタイトルって、かつて僧侶である植木さんのお父上が「仏教の教えに通ずるね」そういわれたことがあるんだとか。
 分かっちゃいるけどやめられない――人間の根源的なところにある弱みとか、煩悩といったものを表わしている言葉。欲(金銭欲や性欲だけでなく、詐欺師というのは名誉欲とか一時的な達成感を欲する気持ちが強いんだと思う)に飲み込まれている男。
 それを包み込んであげる女。
 女たちは、「こんな人を許して上げられるの……あたしだけしかいないわ」、そんな満足感があったんじゃないだろうか。こんな馬鹿げた嘘を信じてあげる女なんて、他にいるはずない。そういったちょっと変わった「独占欲」をうまく刺激するような男だったのかもしれない。
 クヒオという人は。


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