23日まで

 ゴーギャンって、パンダだったのね。

「申し訳ありませんが、立ち止まらずご覧下さい……」
「ゆっくりとお進みになりながらのご鑑賞をお願い申し上げます……」


 こんな言葉が静かに連呼される美術鑑賞。上野動物園の「パンダ初登場」かーーーっ! ああああああ思い出しても腹の立つ、アホらしいったらありゃしない。
 今回の目玉といわれている作品、『我々はどこから来たのか、我々は何ものなのか、我々はどこへ行くのか』、縦が140センチ弱、横が370センチ強という大作だ。

 この展示の仕方のひどさたるや、まこと筆舌に尽くし難い。


■怒りの理由

 このポイントは別に「立ち止まらずのご鑑賞」ではない。まず

1:絵との距離感が狭く、かつ平行移動なのでおおよそ全体的に作品を「観る」という行為ができない。
2:そのうえライティングが悪いもんだから、絵の上部は照り返してよくわからず。
3:うしろに「立ち止まってゆっくりご鑑賞」のスペースはあるものの、段差もへったくれもないので、エンドレスな「立ち止まらず」の行列で全然見えない。


 なめんなよ主催者!
 この展示会(展覧会なんて絶対にいわせない。日本語は正確にね)は、料金を払ってくる人々にたいして、ゴーギャンのこの作品を「見せれ」ばいいと思っている。「観せよう」とは思っていないのだ。
 私は後ろの「立ち止まってご鑑賞」スペースで、途方に暮れる背の低い方たちを何人も見た。どうしていいか分からない子供やお年寄を見かけるのは、つらい。困ったような、疲れたような顔をして出て行った人達。お金返してやれよ!
『阿修羅展』のときは、こういった問題がきちんと対処されていた。立ち止まらず観るエリアも円形になっていて全体像がつかめ(まあ立体ということもあるんだけど)、全景を観られる愉しさがあった。後部鑑賞スペースは当然のごとく高いところに設置され、これまたじっくりと阿修羅と対峙できたのだった。 
 素人か国立近代美術館! またこのゴーギャン展示場が「オープンスペース」に毛の生えたようなつくりで、趣きもヘッタクレもあったもんじゃない。ただパーテーションで区切っているだけ。おおよそ「美」というものを扱う人間たちの構成したものとは思えない。「ハコ」と「展示されるもの」のレベルが違いすぎるのだ!


■『エ・ハレ・オエ・イ・ヒア


 はい、分かってます。作品に罪はないのです。 
 私は『エ・ハレ・オエ・イ・ヒア』という作品に強い関心を持った。
 このタイトルの作品2つあるようなんですね。有名なのはうしろに子供を抱いた女がいるバージョンかもしれない。今回はそれがない、もうひとつのほうが展示された。
 夏の強い日差しの下ずっとおもてにいると、目が負けてフト視線を変えたときに、あたりが変に暗く、黒っぽく見えることってありませんか。
 この絵を見ていたら、そういう強い日差し独得の世界の見え方を感じた。一枚の平面に描かれた小さな絵を見ているだけで、いつしか今までに自分が体験した、光や温度や風が蘇る不思議。未知の国や過去とリンクする感覚。
 そういったものを一瞬でも感じると、私は美術館に来たなあ、よかったなあ、と思うのだ。


○付記
 さてこのゴーギャン展ですが、常設展示も見逃さないでほしい。ゴーギャン展のチケットで無料で入れます。それについては明日。

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