『ガス人間第1号』


 ちょっといろんなことがあって日記をつけられないでいた。さかのぼって行動と印象の記録だけつけておきたい。
 この日は日比谷・シアタークリエにて『ガス人間第1号』を拝見。



 参加メンバーの中では、「中村中」が一番「舞台的存在感」を放っていた。
 うん、感動とまでは正直いかないが、感心させられた。「暗い過去のあるミステリアスな歌手」という、あまりに「任」な役だったというのもあるけれど、舞台は「地」でやればいいというものではない。決して人にペースを乱されない「呼吸」の整ったセリフ、他者を圧するような「押し」のある雰囲気、得難い舞台的美点を持った人だと思う。
 そして高橋一生というひとが上手だった。よく通る低い声、「二枚目」の声。決して正統派二枚目の顔ではないけれど、「二枚目」の声というのは男優にとって宝だと思う。単なる美声は生まれつきの資質でしかないが、「二枚目の声」というのは俳優が修行で作り上げるものだ。このひとはそういう声だと思う。演技も全て適格だった。 
 さらにベテラン、水野久美に驚かされた。


 もうけっこうなお年だとは思うが……いやー艶やかで、女優としての「華」もちいとも枯れてなくって、見事だった。それだけにあらず、「舞台俳優」としてのテクニカルな意味でも、存在感という意味でも、立派だった。ラストのどんでん返しをひとりで表現しきるところなど、うーん……堪能しましたねえ。「女役者」という風情まで感じさせる。
 と、なかなかに楽しめたんですけれど……この3人の受け持ち以外のシーンには相当な疑問。
 脚本の問題だと思うけれど、基本「ショートコント」的芝居の連続、なんだもの。小さい。舞台というものはもっと大きなサプライズや夢を繰り広げることができる場所なのだ。悪い意味で小劇団的。演芸場的。笑っちゃうんだけどね。くすぐられちゃうんだけどね。しかしこの手の笑いは一過性のもので麻薬性はない。本当の「舞台」には中毒性がある。そこを、追求してほしいと思う。



○付記


この日、中川昭一氏急逝の報あり。ただ驚く。


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