『君を想って海をゆく』
これね、いい映画なんですよ。
先週末に公開されたての『君を想って海をゆく』。12月も後半、大作話題作がたくさん公開されてて埋もれがちな一本かもしれない。なのでちょっとここでもご紹介しておきたい。個人的にエールを送っておきたいのだ!
監督はフィリップ・リオレ。彼の昔の作品、『パリ空港の人々』って映画が好きだったなあ。
【あらすじ】
主人公はふたりの男。
ビラルはクルド人の難民の少年。イラクから、フランス最北部の町カレまで「歩いて」きた。 海の向こう、イギリスには引き裂かれた恋人がいるのだ。
密航は失敗に終わった。密航といっても、難民の彼には正規の手段で渡りようもない。目の前には、果てしない海。
シモン(ヴァンサン・ランドン)はかつての花形水泳選手。けれど今は公営プールの指導員で地味に暮らしている。妻とは離婚調停中。
「水泳を教えて下さい」
ある日、おずおずと声をかけられた。ビラルである。断る理由もなく、シモンは教え始めるが、ビラルの泳ぎは素人も同然だった。
ビラルの恋人は無理やり結婚させられようとしていた。時間がない。
言葉から、外見から、次第に目的がみえてくる。関わらないようにしようと思っても、つい言ってしまった。
「やめとけ。泳ぎきれるわけないぞ。何人も失敗して死んでるぞ!」
季節は、冬。
あたたかい温水プールでは、毎日のように、ぎこちなく何度も何度もクロールをかいては戻るビラルの姿が―――。
このビラルの瞳が目に焼きついて離れない。
誤解を招くかも言い方かもしれないけど、「犬の瞳」を、思い出してしまった。困難とか難儀とか、そういうことを一切考えてないその目。どんな遠いところに離されても、一路を無私にひた戻りするようなそのこころ。
ビラルには帰る家もふるさとも、国もないのだ。この世にただ「絆」といえば、海の向こうのあのひとしかない。だから、海をゆく。そこに何のためらいもない。そのことをくさい台詞で説明するでもなく、音楽も何もなく、ただ瞳だけが雄弁に語る。
その瞳に次第にひきずられていく水泳指導員の中年男、シモンもすばらしかった。
『君を想って海をゆく』、ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開中。
発売中の雑誌『ゆうゆう』(主婦の友社)の映画欄でも紹介しています。よかったら読んでみてね。
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♪はぁ一週間に十日来ィ〜。