『黒い天使』

黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 コーネル・ウールリッチの『黒い天使』、一晩で読みました。おもしろかったなあ。
 超簡単にあらすじをいうと、夫の無実を信じる妻の犯人捜し。これがある種…『舞踏会の手帖』的な展開になっていくんですね。疑わしき4人の男を訪ねていくんだが、どの男も魅力的に怪しい。特に第3の男! フィルムノワールを読む愉しさ、堪能しました。頭の中で、ずーっとキャスティングをあれこれ考えながら。

 この作家、映画化された『黒衣の花嫁』『暗くなるまでこの恋を』『裏窓』あたりが特に有名なんだろうが、これも映画化されてるよう。出来はどうだったんだろう…ロイ・ウィリアム・ニール監督って知らんかったな。ソフト化されておらず確かめようがないのが残念。映画史的にも有名作ではなさそうだし。

 ヒロインのキャラクターが…多重人格的というか、そこが変に面白く。冒頭は23歳という年相応の精神的弱さをみせるかと思えば、殺人現場で妙な落ち着きと理性を示し、スラムや裏社会で生きる人々とも長年渡り合ってきたかのような扱いの慣れがあり、人間哲学がある。

 女優でいうと、冒頭はテレサ・ライト的だったキャラが、捜索をはじめると俄然強くなり、C・ロンバードやB・スタンウィックかな、と思って読んでると、第3の男とのエピソードからは「甘さのある女優でなければ!」と思い、『汚名』の頃のバーグマンなんかが適役と思えてくる(尻もちダンス、巧そう)。

  そうそう、アーヴィング・バーリンの名曲『Always』が効果的に使われていた。最初の男のエピソード、感傷的で個人的には一番好きだ。戦前のフランス映画のような趣がある。永久の愛を誓うこの歌詞を、こういう風に死の方向でつかうなんて凄いなあ…。


○今年の目標「一日一句」

 大雪の予報でしたが、はずれてくれて本当に良かった。小雪がちらつく程度ですみました。珍しく昼も夜も人と会う約束があったので、本当に助かった。
 中目黒、久々にいったらいろんな店がなくなって、新しい店が出来ていた。本当に不粋なまちになりさがってしまったなあ…。

 梅が香や となりの庭の 梅を知り

 小雪舞い ひさかたぶりに 空仰ぐ