『こわれゆく世界の中で』

内面演技合戦ムービー


 私は、「この人、誰かに似ている!」とひとたび思うと、どーしても突き止めたくなってしまう。
 そんな欲求が生まれつきあるのだ。堅持しているといっても過言ではない。
 これが「あ、ハナ肇に似てる!」「マギー・ミネンコにそっくり」などと瞬間分かってくれれば、心スッキリ快眠快便の至りなのだけれど、どーにも誰に似てるか判然としないときの苦しみたるや、筆舌に尽くしがたいものがある。そう……長年私を苦しめてきた「誰に似ているのかわからない女」、それが誰あろう「ジュリエット・ビノシュ」その人である。
 思えば『ショコラ』あたりから陣痛にも似た苦しみは始まった。妊娠したことないけど。
 誰……いったい誰……気になって映画どころの騒ぎではない。メンテが甘い「秀香」? すこし平体かけた「高見恭子」? ちょっと綺麗な「石川三千花」? どれも違う、そしてどれも失礼……。
 ああ! それがめでたく先日『こわれゆく世界の中で』という映画の試写中氷解した!
 エキセントリックにわめき騒ぐビノシュを見てひらめきましたね、ビノシュは「アニータ・アルバラードに似てしまう一瞬」が確かにある! だからなんだってんだという声がそこかしこから聞こえてきますが、はい、ここまで前説。

<参考資料>
    

 ほらあなたもどれがどれだか分からなくなってきた……。髪型と服だけじゃんとか言わないように。

 
 『こわれゆく世界の中で

イングリッシュ・ペイシェント』のアンソニー・ミンゲラ監督の新作です(脚本・製作も)。仕事にのめり込む男(ジュード・ロウ)と心を病む女(ロビン・ライト・ペン)の愛と惑い、そこに闖入者として現れる少年、その母(ビノシュ)がふたりに様々な変化をもたらし、糸が絡まるように気持ちがもつれて……というような話。
「君が僕を噛んだ瞬間、確かな絆を感じた……」
「私をもっと見て、見つめて!」
「何年間私が女じゃなかったと思っているの?」
 こんなハーレクインのようなセリフがずっと横行し、役者達が濃密な内面演技を繰り広げる2時間。胃もたれしそう。メロドラマ調をベースに「愛の不在」「母性」「自我」といったテーマをうまくまとめてるミンゲラですが、結局「ジュードのくちづけはどんな女も黙らす」という点しか私は印象に残りませんでした。躁状態になったロビンもビノシュもこれでイチコロ。日本猟友会の麻酔銃みたいな男だ。


<参考資料その2>
   
「ビノシュズ」のみなさん。


○追記:個人的俳優雑評
 一番の好演はこれがデビュー作というラフィ・ガヴロン、ビノシュの子供役。悪い仲間の誘いに乗るも、良心の呵責に押しつぶされそうな善良な少年の表情を見事に表現。イノセントで都会ズレしてない雰囲気に好感。ロビン・ライト・ペン神経症の役をやらせたら多分今一番じゃないだろうか。「こんな奥さんじゃそりゃジュードも浮気するわ」という説得力が見事。そしてビノシュ……私生活ではブノワ・マジメルを篭絡し(別れたけど)「ショコラ」ではジョニー・デップ、そして今回はジュード……しかも濃厚なベッドやらお風呂シーンまで……。欧米男子にとってこの手の顔はたまらん魅力があるものなんだろうか。全然分からん。謎だ。
 ラフィ・ガヴロン


公式HP:http://www.movies.co.jp/breakingandentering/ 
4月21日より全国順次公開


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